月下の元で王は喚いて④
盾を構えて棍棒を防いでくれたエルルゥには感謝しかない。
そして、雑魚が終わったということは本格的に攻撃に移れるということでもある。鑑定してみてもプギーが仕事をきちんとしていたのか体力も満タンに近い。ただ、MPがあまりないというのは……ねえ。
まあ、ここはMPポーションで回復させればいいのか。そんな暇があれば。
「さて、さっきのは前哨戦。こっからが本番だね」
「そ、そうだね! ボクはまずなにすればいいかな?!」
「えーっと、ルルークは……ちまちま削る! チリンとエルルゥは攻撃に徹してプギーも回復!」
指示を出し、その通りに動き出した。
さて、私はやることがない。私も攻撃に徹しますかね。バフデバフは回復役であるプギー担当だしね。妖精王をネットで調べると運営は攻撃はあまりできない支援型としているようだから、バフデバフは使えるはずだ。
聞いてみるかな。
「プギー! バフデバフは使える?」
「初級のものならーーー!」
という元気のいい返事が返ってきたのでチリンとエルルゥにかけろと指示し、私もMPポーションを飲み干して、魔法攻撃に専念することにした。
さすがボスというだけあってか、防御力も力もある。かしこさはないようだけどな。
うーん。だけどもさ、不安要素があるんだよねえ。
かしこさはないにしても、普通のゴブリンよりは知能があるし、まとめ上げるだけの力もある。
だからこそ、こいつならではの隠し玉っていうものがありそうな気がして……。
あと、まだ根拠はある。
順調すぎるのが一番の問題なのだ。
今のところ、普通のゴブリンより大変かなって程度。ただ、それだけなのだ。プレイヤーが苦戦するほどではない。
だったら、なぜプレイヤーは苦戦しているのか。こいつにはまだ出していない隠し玉がある。
だったら、その予防線を今からでも貼っておかなくてはまずいんではないだろうか?
「エルルゥ! 蘇生ポーションって持ってる?!」
「ああ、あるさ! もしものときのためにね!」
「おーけー! そして、エルルゥの防御力はどれくらい?」
「たしか40くらいだったかな? なんでそんなこと聞くのさ!」
40くらいか……。平均がわかんないから高いか低いかはわからないけど……。
うん、耐えれたら運がいいってことだ。
「プギー! エルルゥに防御のバフかけて!」
「りょうかあぁぁぁい! ”プロテクション”」
「防御力をあげる……? この場合は攻撃力じゃないのか?!」
「いいから! 攻撃を続けて! 私の予想があってたらちゃんと意味はあるから!!」
「わかった! じゃあ、君の予想というのを信じることにする! 予想違いのほうが嬉しいけどなあ!」
といって、攻撃を続けている。
ゴブリンキングを鑑定してみると、そろそろ体力も半分くらいになってくる。
もちろんこのまま順調に――――というわけにはいかない。たぶん、百パーセントの確率で、私たちは死ぬ。
まったく、こういうことに気づいてしまうのは幸いなのか、それとも不幸なのか。プレイヤーの立場からすると、幸い…というほうなんだろうけどな。
そして、ゴブリンキングの体力は、半分を切った――――
「ギャオォォォ!!」
ゴブリンキングは咆える。
そして、夜も更け、月が姿を消してしまう。ゴブリンキングは、ただただ、大きく咆えていた。そして、私の体力は、すぐに消し飛んでしまった――
ゴブリンキングはそう簡単に終わらない。
伊達にエリアボスを語っているわけじゃない。第一層エリアのボスを名乗るほどの実力はあるからして――