月下の元で王は喚いて③
思い出すのは小学校の頃。珠洲や他の男の子たちと遊んでいたときの事。
『たっちー!』
『今バリア貼ってましたー!』
なんていう謎バリア。今となってはあれ超ほしい。
「ギャオオオオ!!」
「あぶなっ!?」
あのバリアがあったらこの鬼ごっこで無敵だと思うから!
エルルゥやルルークたちが雑魚を殲滅している間、私はひとりでゴブリンキングと鬼ごっこ(捕まったら死)のデス鬼ごっこの最中だ。
騎士なら一発受けたところで耐えるとは思うけど私紙装甲だから! 防御力が真面目にないからね!
「精霊魔法、闇!」
そのなもブラックホール。まあ、MPがMPなぶん威力もそこそこ。ただ、ゴブリンキングにとってはなんでもないようなダメージだ。いや、ブラックホールはじわじわと継続ダメージを与えていくような攻撃だし仕方ない。
《スキル:闇穴を習得しました》
やりぃ!
ブラックホールを地面に設置した私は必死に逃げる。すると、ブラックホールに片足を突っ込んだゴブリンキングはその場で転んでしまった。
「ギャオァァァ!!!」
なんだか正々堂々と戦え誇りはないのかって言われているような気がする。誇り?んなもんあるわけない。勝てばいいのだよ勝てば!
他のプレイヤーも苦戦しているような敵を私たちが倒せたら爽快じゃん?!
というか、こういうずるをしていかないと私すぐ死んじゃうんだよお!!
「ギャオォォォ!!」
ゴブリンキングはブラックホールから足を無理やり引っこ抜き、自分の棍棒で地面を叩きつけてブラックホールを消してしまった。
そして、再び私を追ってくる。
だが、ぬかりはない。きちんと罠は仕掛けてある。だから大丈夫なはず。
「ギャオォォォ!!」
大丈夫じゃなかった?!
なんで突破できるの!? ブラックホールをまた棍棒で叩きつけて消しやがった!? チックショウ! 次の足止めを考えておかないとなあ!
とりあえず土魔法!
土魔法で落とし穴を作る。
《スキル:落とし穴Lv1を習得しました》
レベルあるのかよ落とし穴に!
ああ、本当だ。なんか小さい!? あれじゃ片足も入らないよ?! 使っていくしかないのかあ! 消費MPどれくらいだろう? それによっては連発できないんだけども……。
ええい、見てる暇はない!
連発連発連発じゃああああ!
ゴブリンキングの指くらいしかない落とし穴を作りまくる。
すると、地面にはたくさん穴が開いた。やりすぎたか……?
だが、効果はあった。
ゴブリンキングがのっかると地面は崩れていく。
そして、穴に落ちてしまった。だけドその瞬間に私の体に異変が起きる。ちょっとどころか、ものすごく体が重い。自分を調べる余裕ができたので、調べてみると、MPが底をつきそうだった――
魔法を使いすぎたからだよね……。どうしよう、これ、逃げるにも体が……。
「ギャオォォォ!!」
必死の抵抗なのか棍棒をこちらに投げつけてきた。
あ、やばい。当たる。に、逃げなく……くそ! なんか体が動かない! ぐううMPがないからだるさが体にぃ……!
はぁ、ダメかも、あれは、避けられない――
その時だった。
「”プロテクト”」
隣から、大きな盾を持った人が私の前に躍り出てきた。
「大丈夫かい?」
その姿はまるで絵本に登場する王子様みたいで、白馬に乗ったとは言わないけれども、か弱き女子なら一発でノックアウトされそうになる王子様が、私の目の前にいた。
「やっと雑魚を殲滅出来たよ。危なかったね、ミキ」
「エルルゥ……!」
めちゃくちゃかっこいい!!
王子様(女)
こうしてミキもレズビアンの道に引き込まれていくのであった。みなさんも、王子様を思っている人間がじつは女性だったということもあるかもしれません。お気をつけて・・・