獣の国
暖がほしい……。
いや、火魔法を使うのもありだとは思うけどMPがなぁ。多いとはいえずっと消費し続けるとなると私の貧乏性が……。
「さぶいいい」
「大丈夫?」
この極寒の中なぜ肩出して歩かなくちゃいけないんだ……。
「あ、街が見えてきたよ!」
そう言われると、私は走り出す。
コート! 上着! とりあえず寒さをしのげるものがほしい! なにがなんでも手に入れてやる!
辿り着いた街。
ケモミミがあふれていて、猫のしっぽだったりキツネだったり。いろんな動物の人がいる。いわゆる獣人ってやつだな。
なるほど。ここは獣国か。
「ぬくぬく」
上着持ってなかった勢はここで上着を購入しぬくぬくできた。
鎧とかならまだしも普通の布の服とか防寒性が皆無だからねぇ……。寒かった。みるきーにあげたことは後悔してないけど寒かった。
「見てよミキ! リアル獣人だよ! 猫耳! 犬耳! ふぁああああ!」
「リアルってこれゲームだからリアルも何も……」
フィクションですよ。
だがまあしかし、チリンがこんなにはしゃいでいるとは。獣人好きなのかな? そういえば昔から動物は好きだったような。
「そのケモミミもふらせてもらってもいいですか?」
「えっ」
ストーーップ! NPCさん困惑してるでしょ?
「ミキ! 止めないで! ケモミミが! ケモミミ美少女が私を!」
暴れるなって! 鎧のせいで抑えにくいんだから!
それにしても、チリンがここまで取り乱すとは。ケモミミの破壊力って相当やばいな。一瞬別人格かと思ったよ。
「でも、可愛いな」
「そうだね」
と、エルルゥとルルークも小さい女の子と男の子を撫でながら言っていた。
えっ、私がおかしいの? 惑わされない私がおかしいの?
「おねーちゃんそこそこ」
「きもちー」
「……むふーっ」
「可愛いなぁ……!」
二人とも満足げだ。
私がおかしいのかな? えっ、暴走をさせないほうがおかしいの? そんなにケモミミ美少女には魔力あるの?
ただ私は可愛いなっては思うだけでそんなに……。
「ゴロゴロ……」
「くぅーん」
撫でられている男の子と女の子は気持ちよさそうだ。
……ごめん。私が間違ってたわ。気持ちわかるわー。これ可愛いわ。ロリコンとかの気持ちもよくわかるような気がした。
……はっ。洗脳されかけていた!
危ない。本当に魔力あるんだな。侮れない。幻惑無効もってるはずなのに私が幻惑されるとは……! 固有スキル使えないな!
おちつけ。惑わされるな。常に平常心だ。素数だ。素数を数えるんだ……。
「2、3、5、7、11……」
よし。落ち着いた。