殿中でござる ③
分身に囲まれたマーヤ。
私はその分身の一人に魔法を放った。すると分身は一人消える。攻撃あてたら消えるのだろうか。素早さが高いから当てられないだけで?
ふふふ、なめないで。スリングショットで私は狙撃の練習をしたんだよ。
それに、私は動体視力はいいほうだ。
当てるのは簡単。
「なんと……! 新たなやつが来たか。だったら……!」
瞬間。
忍者は私と距離を一気につめ手にしたクナイで斬りつけてくる。
それを危なくかわす。こう一瞬でやられるとなかなかきつい……! だけどまぁ、私は結構躱す。そこからの相手の攻撃だって予想する。
次はそのクナイを投げる!
「ふっ」
「やらせないよ」
約束の地を発動。
床の樹を成長させ絡み付かせる。足が木に埋まり、腕にも絡まる。身動き取れなくなっていた。……楽勝じゃん。よくそれで暗殺をしようと思ったな。
「なんだこれは……!」
「私の力」
私は、模倣太陽を創り出し、忍者の近くに置いた。
忍者は汗をかき、意識を失っていた。所詮は人間。熱中症でも起こしたのかな? ま、それならいいんだ。とりあえず、終わり。
《ハルカ、マーヤ、ミキにより第五層エリアボスである大忍者カゲロウが討伐されました》
《Another Arcadia Onlineのアップデートを始めます。皆さまは一時間後には強制的にログアウトさせられます》
エリアボス討伐。
「……ありがとう。助けてくれて」
「気にしないでよ。マーヤだってギルメンなんだから」
「……うん」
マーヤはきつかったのか地面に座り込んだ。
マーヤはタイマン向きだからなぁ。複数戦闘はちょっと厳しい。暗殺者自体がそんな複数戦闘を主に作られた職業ではないからだけどね。
六人に囲まれ一斉に襲い掛かられたら捌くだけでも大苦労だろう。
「それに、マーヤだから簡単に討伐出来たんだと思う。他のプレイヤーなら素早さが違いすぎて圧倒的に不利だったんじゃないかな」
マーヤだから攻撃を当てられた。
きっと素早さに翻弄されてほしいというのが運営の想いだろう。剣士や戦士なら素早さが低すぎて追い付けないはずだ。
だからこそのボスだ。
あの一瞬で間合いを詰めるのは相当厄介だ。
戦士のハルカでさえ結構なダメージを負っているのだから火力もある。素早さが高く火力も高い。なら防御が低いんじゃないかな。
ボスというには申し分ない。ただ相手が悪かった。
「とりあえず、お疲れ」
「……うん」
ハルカにポーションを飲ませる。
体力が回復し立ち上がった。気絶という状態異常から解放されたのかむくりと起き上がる。
「あれ? 敵は?」
「倒した」
「すごい!」
ハルカはマーヤに抱きついた。
マーヤは突然のことに顔を赤く染めている。
「は、ハルカっ」
「さすがマーヤだよぅ! 愛してる!」
……まさかの百合?
「違うから。そういう趣味は私にないから」
マーヤは真面目な顔で否定していた。
じょ、冗談だよ……。っていうか、心読めるの?
忍者とマーヤは相性悪かった。お互い素早いから仕方ない。
本来は誰かが引き付けている間に攻撃する。ただミキたちは普通に対応できますし……。ほんと、相性が悪い。運営はきちんと考えろ。
ボス戦終わり。
次は閑話か新しいエリアです。