一夜の泥棒物語 ③
城の中に入り目指すは天守閣。
ゴエモンさんは一階でてこずっているようだった。プレイヤーと応戦している。ならば私も加わってゴエモンさんを助けるべきだ。
「ブラックホール!」
プレイヤーめがけてブラックホールを放つ。
こちらに視線が向くとプレイヤーの顔が一気に青ざめていた。
「ゴエモンさん! 二人でやりましょう!」
「お、おう……今の魔法は精霊魔法……」
「なんか言いました?」
「なんでもねえ! 今は目の前の獲物に集中すべきだったな! いざ、喧嘩の始まりだぜえええ!」
ゴエモンさんが刀をもって相手を切り伏せる。
強いな……。素早さと手数で翻弄している。私も頑張ろう!
「あたしの名は天下一の大泥棒、ゴエモン様だァ! ミキも名乗れ!」
「ゴエモンの弟子にして精霊の創造神ミキ。押してまいる!」
何となく名乗るとゴエモンさんが驚いている。
「創造……神?」
「あー、そうですよ」
「……こりゃまたたまげたぜ! あたしの弟子が創造神様たァな! 今までの無礼、すまねえ! 喧嘩の相手を捧げるから許してくれ!」
「大丈夫ですよ。ゴエモンさんからいろんなこと教わりましたし」
事実だ。
忍び足など使える技術はたくさんあるさ。疾風とか逃げるときに最適だろうし。
「そう言ってもらえるとありがてえ!」
「とりあえず、蹴散らして先に進みましょうか」
「だな!」
女だからと舐められたらいけないんだ。
ふっふっふ。喧嘩……。私一度もしたことないからどうなるかな。殴り合いと化したことないし言い合いもしたことがない。
……美鈴が重度のシスコンで逆らうことなかったし珠洲も珠洲で優しかったから言い合いはないんだよねぇ。
初めての喧嘩。やってやろうじゃないか!
ゴエモンさんは強かった。
刀以外にも武器を扱えるらしく棍や斧なども扱いながら進んでいく。
現在、三階。
「魔王……!」
「……ミキ。泥棒側にいったのか……。勝てる自信がないが、とりあえずやろう」
魔王トロフィが構える。
私も阿修羅化し応戦準備を整える。ゴエモンさんも真剣な表情で棍を構えていた。
「”魔王の晩餐”」
それは第四層の時につかったスキル。紫色の肌になり巨大化する。
「……面白い」
トロフィ相手とか苦戦する未来しか見えないけれど……。いや、負けるかもしれない。トロフィは強いからね……。
そして、闘いが始まろうとしていた。その時だった。
「トロフィさん~! 遊びに来ましたですぅ~!」
プギーが、やってきたのだった。
ここで回復役もかっ!
「ククク……死神代行ミソギ……登場……」
げえ!? なんで王が三人もそろうの!? 一人は神だし!
「あら、ミキ。来てるの……。ああ、泥棒側……」
「ミキさん泥棒側なのですか!?」
「う、うん」
全員知り合いだからちょっとやりづらい……。
「……ククク。死神は敵対するつもりはないわ……。来い、魔王……!」
「寝返るんかい!」
私のツッコミがこだました。