閑話 竜宮王国の姫、オト
……どこだここ。
僕は迷って浜辺にいた。海のかなたしか見えない。第五層エリアの探索をしていたはずなんだけど突然海に出た。
すると、なんだか人が浜辺に倒れているのだった。
僕は慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
体を起こし、ちょっとだけゆする。反応が返ってきたのでまだ息はあることがわかった。
「た、食べ物を……」
といっていたのでイベントリに入っている満腹度回復用の小麦のパンを与えてあげた。
手渡すともぐもぐと食べて、そして、海の水を飲んで……。
「海の水はダメ!」
海の水なんか飲んじゃだめだよ! だがしかし、僕の忠告を無視して海水を飲み始めた。
僕の心配をよそに、女の人は起き上がった。
「ふぅ。飢えて死ぬところであった。感謝いたし申すぞ!」
と、女の人が元気よくそう言っていた。
「恩人様よ。どうか妾に貴方の名前を教えてはくれまいか」
「僕ですか? 僕はニルヴァーナです」
「ニルヴァーナか! 気に入ったぞ! 其方を妾の夫としてやろうぞっ!」
と、突然告白された。
いや、可愛いし、現実でならいいけどゲーム内で夫とか結婚は……。
「遠慮します。結婚するつもりはないので」
「……むぅ」
女の人は頬を膨らませる。
「……まぁよい。妾は絶対に振り向かせてみせるからの。というわけで、妾が仲間になるのじゃ」
「……話が急すぎません?」
「いいじゃろう! 其方は身なりからして旅人であろう! 仲間もいないようだし寂しかろうて。綺麗な姫様である妾が其方の仲間に加わるのじゃ! 光栄じゃろう!」
「いや、そういうわけじゃ……姫様?」
この女の人、姫様って言った?
「ああ、そうじゃ! 竜宮王国の姫! オトという名前じゃ!」
……乙姫様。ですか。
「ちなみにオトというのは漢字であって”乙”と書くのじゃぞ」
まんま乙姫やないですかい……。
「どうじゃ! 乙姫といったらこの国で知らぬものはおらぬぞ? いろいろと贔屓してもらえるかもしれんのぅ」
うう、ちょっと贔屓という言葉につられる……。
「妾はこう見えても戦えるのじゃ! 死んでも生き返れるような薬もかぶったからの! 其方の仲間になる準備は万端じゃ!」
「どうじゃ、どうじゃ」と仲間にしてくれと可愛い笑顔で言ってくる乙姫さんの願いを結局断ることはできなかった。
だって可愛いんだもん。
「海洋魔法”津波”」
乙姫さんは海洋魔法と呼ばれる海の魔法で戦うらしい。なにもないところから津波を引き起こしたり渦巻きを発生させることもできるんだとか。
海の中だけのものを地上でも出せるよう努力した証らしい。
「津波に飲み込まれて滅ぶのじゃ♪」
機嫌がよさそうな乙姫様。
……ミキさんに報告しなくちゃな。乙姫様が……って。
オト姫
竜宮王国の姫である。研究家でもあり魔法の研究を専門にしている。海洋魔法の身ではならず、人族魔法、魔族魔法、精霊魔法という魔法すべてを使用可能。
以前は自分の変化ですが今回は仲間になりました。
オト姫出会いイベント出し方
限定1名
ブルーネームのみで男一人で浜辺に行くと倒れていることがある。食べ物を差し出すと仲間になってくれる模様。