閑話 ロトのゲームストーリー
暗い話が二回続いたのでお口直しの閑話。っていうかRPG。
とある王国。その王国は邪神の支配に悩まされていた。
邪神カーリ。世界に魔物を放ち、村を奪っていく。一体何人殺しただろうか。わからない。王国も手練れを派遣しているがその手練れですら帰って来ぬ者もおった。
だが、王国に希望が誕生した。
「陛下! 勇者が、勇者が生まれました!」
「おお! 誠か! 連れてくるのだ!」
そして、数日後。勇者の紋章を手の甲に宿した男が謁見の間に連れてこられた。
みずぼらしい格好をしており、びくびくとして傅いている。王は髭を撫で見定めるように見ていた。信じていないわけではないが、少しばかり不安でもあったからだ。
「勇者よ。面を上げい」
「は、はいっ!」
「名は何と申す?」
「ろ、ロトって言います!」
勇者ロト。この世界に誕生した勇者である。
「ロトよ。まだお前は邪神には敵わぬ。そこで試練を与えようか。この世界に存在する種族の頂点たちと話し、紋章をもらってくるのだ。その紋章をそろえたところでワシの元に戻れ。邪神カーリに挑戦する権利を与える、世界を救うために、どうか頼む…」
この世界の種族の頂点は魔王、妖精王、精霊王、不死王、獣王、機械王、竜王、吸血鬼の始祖だ。
この八人から紋章をもらう。それは一筋縄ではいかない試練であった。勇者ロトは受け入れる。自分が世界を救う勇者だと信じて疑うことはない。だって勇者なのだから。
勇者ロトは早速王城を後にし、出発をした。
まず向かったのは妖精の国。
妖精たちが住む国であり、邪の心を持つものを拒むという。また、妖精は自由を好む種族であり、気に入らない人は入国を拒むらしい。
「ゆーしゃ……。ゆーしゃさまー」
「よーせーおー様ー! ゆーしゃがきましたー」
妖精は飛んで妖精王のもとに報告に向かう。
数分後妖精王が現れたのだった。妖精王プギー。妖精としての力はものすごく相手を癒す効果はものすごいらしい。
普段彼女が浸かっている妖精王の泉は回復効果が強く重病でもすぐに治ってしまう霊薬とされている。
「おまちしてたのです。ゆーしゃさまに解決してもらいたいことがあるのです」
「なんでしょう?」
「近頃泉の水が減っているのです。湧き出る量も少なくなっていて……。水源に何かあると思うのです。妖精はひ弱な種族のため何かいたら抗うこともできず……。見てきてくださいなっ!」
という内容。
ロトは快く承諾した。山を登り、水源と呼ばれている場所に行くと、一匹の虫が水を飲みまくっていた。虫の名前はハングリーワーム。腹ペコのムカデであった。
勇者は剣を振り、両断する。
「ふぅ。ちょっと苦戦した」
戦いの経験もないために、剣が当たらないことがままあったのだった。
そして報告しに、妖精王のもとに向かう。妖精王に報告すると喜ばれ、邪神討伐にならついていくといってついてくるのだった。あとついでに紋章をもらった。ちょうちょのシンボルをしていた。
次に向かったのは不死王の墓場。
夜にしか不死王は現れないらしい。不死の王様だからだろうか。暗くじめじめした不気味なとこを好むらしい。
勇者と妖精王は不死王と出会った。
「あら……。妖精王。奇遇ね……。そちらは……だれかしら」
「こちらは勇者のロトなのです」
「ロト……覚えたわ。ククク……」
不死王の不気味さにちょっと身を引いた。
「最近邪神の動きが活発になってるものね……。私のゾンビもいくばくか犠牲となったわ。ククク……」
「不死王のミソギ。かつては貴族の令嬢だったですがゾンビに魅入られ自らがゾンビとなった女性です」
「ゾンビはいいのよ。私はゾンビしか信じてないわ……。スケルトンもいいわよ。グールとかも好みだわ……」
「そんなことはいいです! 紋章をよこすです!」
妖精王、雑であった。
不死王は困った顔をする。
「すぐには与えられないわ……。なぜならば、私も現在困っているからよ……。その紋章がほしければ私の願いを叶えるの……」
「ど、どういう願いですか?」
「勇者をゾンビにしてみたい」
無理な願いである。
「それは私の願望だったわ……」
「が、願望怖いな……」
「私の困ったことは……最近自我を失っているゾンビが多いのよ……。私の可愛いゾンビちゃんは命令に従うのだけれど他所のゾンビちゃんがうちのゾンビちゃんをいじめるのよねぇ。そのゾンビちゃんを倒してきてほしいのよ」
という願いだった。
それならばと勇者は受ける。奥にいるというので奥に進むとゾンビがいたのだった。だが、それは普通のゾンビではなく、ゾンビの上位種、ジェネラルゾンビ。
一筋縄ではいかない相手だ。
妖精王と共に戦う。
攻撃を受けると回復してもらい、また、立ち向かっていく。そして、なんとか勝利を収めた。
「ククク……ありがとう。あなたいい戦いぶりだったわ。貴方が死んだらゾンビにしたいほど惚れちゃった。ついてくわ。死ぬのを待つのみだけれどね……」
不気味な仲間が増えた。
続いて向かったのは機械王。
機械王は道中がきつかっただけで機械王自体は困り事とか特にはなく軽く紋章を渡されたのだった。すんなりいったことにちょっと戸惑っていたがロトたちはまた出発していった。
戦闘経験もつんできた彼らが次に向かったのは魔王城。魔王トロフィが治める魔族の国。
その魔王の玉座に座るトロフィを謁見している。
「ふむ、ま、俺も邪神の動きが気になってたところだし、そろそろ排除してやりたかったところだ。紋章はくれてやるし、特別に俺もついていこう」
と、すぐに終わる。
続いて獣王。
「俺は獣王のガガトツっつうんだぜ! 紋章がほしいなら俺を倒していけよなァ!」
と言われたので戦うことになった。
ガガトツは戦うことが好きだ。獣化し素早い身のこなしで着々と攻撃していく。ロトは必死に耐えるも一度は負けてしまった。
再挑戦。
なんとか勝てた。
「やるなァ! いいぜ、進みな。紋章はくれてやる!」
ガガトツはいい笑顔で紋章を渡した。
邪神討伐のための旅はあと少しで終わる。吸血鬼の始祖、精霊王、竜王の三人であった。
竜王のニルヴァーナのところに向かう。
「邪神とか気にしてないけど、まあ、別にいいよ。あげる」
とすんなりいけた。
続いて吸血鬼の始祖。吸血鬼の始祖は厄介な人物であった。精霊王に恋しており、精霊王のとこにはいっていないと告げると、精霊王のもとに行くための試練を課された。
吸血鬼の始祖マグダッドを倒せ。そういう命令だった。
何とか勝利を収め、ついでに紋章を貰い、精霊王の元へ続く道が解放されたのだった。
ここで最後の旅。
緊張する。精霊王から紋章をもらえればいいだけ。ただ、それだけ。
ただ、この森。全体的にものすごく安らぐ。邪の力がないような感じがした。森を進んでいくと小鳥のさえずりや木々が風に揺れる音が聞こえる。
「久しぶりに精霊王と会うな」
「楽しみです」
「ククク……。精霊王はもう神へと足を踏み入れたからね。精霊神と呼ぶのがいいんではないかしら」
精霊王様はどんな人なんだろう。
森を抜けると、そこは木々に囲まれた広場だった。広場の真ん中に白いワンピースの少女が座っている。なにかをぶつくさ言っているようだった。
「~~♪」
言っているのではやく、歌っていた。小さい声で歌っていた。
「あのー、精霊王様」
「ひょえっ!? な、なに!?」
「俺、邪神を討伐するために勇者となりましたロトって言います。精霊王様で間違いは……」
「う、うん。そうだよ。私は精霊王ミキ。えっと、なんのよう?」
「も、紋章がほしいなって。ど、どうでしょうか」
ちょっと怖い。なんだか俺らとは格が違う。
神様の目の前にいるかのように感じてしまう。
「うーん。いいけど、邪神討伐っていったっけ? そうなると力不足じゃないかが問題だよね。うん。なら、私がよりによりを込めて精霊を創るからそいつ倒したらいいよ。私より若干弱い程度にしておくから」
と言われたので受けることにした。
そして、創り出された精霊。俺は剣を構えると、精霊の姿が消えた。
ど、どこにいったんだろう!?
「ここだよ」
と、首元にナイフを突きつけられていたのだった。身のこなしが素早く、わからない。いつ攻め込まれたことすら記憶にない。
「まだまだだね」
その精霊は俺から遠ざかっていった。
あ、諦めてなるものか! 俺は世界を救うことを任された! ここで逃げては勇者の名が廃る!
「もう一本! もう一本だけ!」
「……まだやるの? いいよ。あと一本だけならやってあげる」
ナイフを構えた精霊。
俺は、剣を振った。
「……合格。私基準だけどね」
なんとか合格をもらえたのだった。
「じゃ、紋章ね。はい」
紋章を手渡され、王の元に向かった。
邪神は見事討伐出来た。
その光景を精霊王は見ていた。
「邪神ちゃん。大丈夫だったかな」
邪神ちゃんと友達であり、邪神ちゃんがなぜ人々を襲ったか。その理由はわかっている。なぜ紋章を上げたのだろうか。
それは精霊王にしかわかるまい。彼女も、人思いだからだ。
プギー(僧侶)
ミソギ(魔物使い)
トロフィ(戦士)