ワールドクエスト
連れ込まれた家のベッドに男の人は横たわっていた。
男の子は駆け寄る。あの人は父と呼ばれる人なのだろう。
「お父さん。はい、回復ポーション」
「……お前……どこか…ら、もって、きた」
「お姉さんに頼んだの! お姉さん凄いんだよ! 一日で用意しちゃったもん!」
「そうかい……。そこの、嬢ちゃん。これ、飲んでも、いいの、かい」
「もちろん大丈夫ですよ。貴方のために買ってきたんですもん」
飲んでくれないと買った意味がないっていうかね。
千二百円って今思うと普通のポーションの五倍くらいの値段だ。やっぱり大変さが違うんだろうね。カモシカ貯金で結構なお金あるとはいえ……さすがに何個も購入はできない。
私がふと思っていると同時に父と呼ばれる人はポーションを飲み干した。
すると、すぐに、むくっと立ち上がった。傷も完治したのか、巻かれていた包帯を自分で解き始める。ポーション凄いな。あんな大けがでも治るのか。
「お父さん!」
「おう。心配かけたな。嬢ちゃんもありがとな」
息子を撫でながら父は微笑む。
「そうだ。お前さん、名前は?」
「ああ、私はミキっていいます」
「ミキか……いい名だ。ミキちゃんよ、ちょっと、おじさんの話に付き合ってくれたりしねえかい? どうせなら、お前さんに俺の無念を晴らしてもらいてえ」
「わかりました」
「よし。じゃあそこに腰かけてくれ。ああ、名乗ってなかったな。俺は傭兵のデド。こっちは息子のバジルだ。じゃ、俺の話をはじめるぞ」
デドさんは傭兵として大平原に生息するゴブリンを討伐していたときの話だった。
『今日も雑魚のゴブリンばっかいやがるぜ! ところどころホフゴブリンもいやがるよお!』
大剣を振り回しゴブリンを屠っていく。
デドは疑問に思っていた。なぜ、この大平原にゴブリンが大量に発生しているのかと。ゴブリンはまだしも、ゴブリンの少し上のホフゴブリンでさえ、統率の取れた行動をするというのは不思議であった。だけれど、気にせずゴブリンを狩りまくる。
ゴブリンメイジや、ナイト、様々な種類のゴブリンを狩る。すると、でかい遠吠えが聞こえた。デドさんはその遠吠えをしたところに向かうと……。
「ゴブリンキング?」
「そうだ。奴らの親玉、ゴブリンキングがゴブリンを率いていやがった。変異種……なんかではなさそうだがとても強かった。これでも、この街一番の傭兵だと俺は思っていたんだが、負けたのさ。そしてさっきのありさまよ」
デドさんは少し顔を俯かせる。
「そこでだ。お前さん方にゴブリンキングの討伐を頼みてえ。ゴブリンキングがいるところはちょうど隣町へ向かう道のど真ん中だ。あいつを倒さねえ限り次へ進めねえ。この街のためにもやってくれねえか?」
と、頭を下げてきた。
うーん。受けといたほうがいいよね?
「はい。わかりました」
「そうかい! そりゃよかった! お前さんだけじゃなくて違う人でもいい! ともかく誰でもいいんだ! ゴブリンキングを倒してくれ!」
《ミキさんがキークエスト、傭兵の魂は永遠にをクリアしました》
《ワールドクエスト:ゴブリンの王様 を開始します》
というアナウンスが脳内に響いた。
説明:次のエリアに進むためには誰かがキークエストをクリアしないといけません。そして、ワールドクエストを始まらせて、それをクリアしないと次のエリアには進めない仕組みになっております。なお、キークエストはどこにあるかわからず、がむしゃらにクエストをこなすしかないのです。
第一層エリアのエリアボスはゴブリンキングでございます!
いや、一層エリアでこれはいいのかな? なんて思いつつ……。まあ、ゴブリンだしいいか……
転生したらゴブリンだった件
いや、スライムはわかるがゴブリン……?