閑話 運営の悩みの種
ここは運営室。運営がプレイヤーを監視……もとい、プレイ状況を見ている部屋だった。
その中では、もう、葬式状態となっている。理由は、ミキのせいだ。ミキが、また更に進化してしまった。そのことが運営の頭に残っている。
「……おい。たしかに設定はしていた。ただ、創造神の試練は推奨レベルが100だぞ。なのになんでクリアできるんだ? あの太陽、どれだけの威力を……」
「それもさることながら七つも作るMPの多さ……」
「ははは、信じられねえよ。レベル50だと攻撃がまず通らないはずだろ。一定以上の攻撃力を必須にしているしな。なのによ……」
「「「「「いともたやすく超えやがった!」」」」」
精霊神ミキの所業は運営を大変苦しめるものだった。
もともとあの鳥は、一定以上の攻撃力、または魔力が必須。尚且つ素早く動くために当てにくい、ソロで討伐するには普通のプレイヤーならきついはずだ。
……いくら王だからといえどもそう簡単に勝てる設定じゃない。
なのに、勝った……?
「今すぐミキに対抗できるものを投入しろ! 精霊だけに効く魔法だとか!」
「それは無理ですよ! 運営はあくまで公平な立場であってミキ特攻にするのはダメですって!」
「じゃあどうすればいいんだよ! ミキがこれ以上強くなってどうするんだ! なんだ? 俺らが考えているラスボスより強いじゃねえかよ!」
A2Oもラスボスはいる。もちろん考えている。
そのラスボスを凌駕する力を持った人がこのゲームにいるとなると、ラスボスを強くするしかないが、そうなるとミキ以外が勝てなくなる率が高いので却下された。
ミキの進撃は止められない。
「駆逐してやる……!」
「どうやってだよ」
駆逐できるものならしてほしいものだ。
運営は業務が終わると居酒屋に行くことが定番となっている。
ミキの所業を肴に酒を飲んで帰るのが普段の日常だった。家庭持ちの人も積極的に参加している。ミキのせいでストレスがものすごいのだろう。
実際部長は胃に穴が開いた、とか。
「ミキはなんで進化するんらよぅ! どうしてなんらよぅ!」
口足らずに女性社員が言う。
ミキがしたことは運営を必ず困らせるほどだった。創造神になったこと以外だと邪神ちゃんと仲良くなったのがまたストレスを生んだ。
邪神ちゃん。たしかに好感度は設定している。けれど、好感度はなかなか上がらないようにした。
だが実際はどうだろう。
ちょろかった。
すっかりとミキに堕ちたのだった。ものすごく優秀なAIを積んだ邪神ちゃん。運営がものすごく設定やグラフィックに苦労を掛けた邪神ちゃん。それが、ミキに堕ちたとなるともう運営は涙目。
それを知った運営は、何人か逃げ出したという。
後日、そのことを会社内では”世紀末の大逃亡”と語られることになったという。
ミキがしでかしたことは、運営にとってもプレイヤーにとっても重かった。
内容が思いつかないとなると閑話で逃げるスタイル。