精霊神は静かに暮らしたい ③
そして、数分後、ギルドにマグダッドがいた。
……なんでいるんだよ。
「どうも。さっきぶり」
「……何の用?」
「……じゃあ、単刀直入に言わせてもらうね」
と、マグダッドは真剣な顔つきになった。
そして、地面に勢いよく土下座した。
「僕をギルドに入れてください!」
という、お願いをしてきたのだった。
ギルドに入れてほしいって……。これまたなんで。PKをいれるのはしたくないんだけどなぁ。私だって狙ってきたし嫌な気持ちはある。
何を考えているのかわからないってのがね。怖い。わからないことはひどく恐ろしい。昔の教訓だ。
「正直言うと精霊神様に惚れました! 俺と付き合ってくれるとなお嬉しいです!」
「…………」
私は周りのみんなに助けを求める。
みんな首を横に振った。一名を除いて。
うぉたぁが必死に怒ってくれている。嬉しい……。
「嫌だよ。付き合うのは。現実であったことない人と付き合えないって」
さすがにゲームで相手を見つけるのはね。よく知らないし。現実でいい人見つけるのが私なんだよ。
「……ならギルドだけでもっ!」
「えぇ……」
私が困惑していると、チリンが前に出てきた。
「君さ、ミキを狙ったそうじゃないか。それでただ謝ってギルドに入れてもらおうって都合がいいんじゃない? なにか企んでいるんだろ?」
「……なら僕の全財産と全アイテム差し上げます! お詫びとして!」
「ええ!?」
そこまでやるんですか!?
いや、お金は慰謝料としてもらうけどさ。さすがに持ち物はいらないよ。
「必ずや精霊の守護者に貢献いたします! どうかお願いできませんか?」
「……どうする? ミキ」
「どうしよう……」
こればかりは、私の気持ちも考えるとちょっと微妙なラインだ。
さっき狙われたばかりなのにいけしゃあしゃあと入らせてくださいってノーとは言いたいけど、入ってくれると戦力がものすごくアップする。
なんとなく、彼は私と同じ匂いがするから。
プレイスタイルもそうだけど、今までも。私と同じ感じがする。同情の気持ちも沸いてくる。
「……じゃあ、いいよ。ただし、PKなんてしたら即刻叩き出す」
私はそう決断を下し、一足先にログアウトさせてもらったのだった。
※マグダッド視点
僕は昔から自己主張が苦手だった。ノーとは言えずただただいじめられる毎日。いやだった。そんなときにA2Oと出会った。
購入し、プレイする。
すると、吸血鬼の始祖という種族が当たった。どうやら”王”と呼ばれる種族と同じらしく、特別な力だった。
僕はしめたとおもって強くなった。魔物と戦い、レベルを上げていくうちに、どうやら上がり幅がおかしいことに気づく。
そして、僕は、実験のためにPKを犯した。
正直心地よかった。いじめていたやつらを見下せると思った。僕はこんな強いんだぞって。
そして、強くなるためにPKをした。トップの人たちを狙って。
だがしかし、僕は一人の女の子に出会った。その子は僕と同じ匂いがした。
そして、その子に敗れ、初めて、惚れた。強い人に惚れる。男だから仕方ないだろう。美少女だったし僕にもちゃんとこういった感情があった……。
……好きな人の近くにいたい。当面の目標はこれかな!