心なき魔王と精霊神の大木 ③
夢幻地獄を打ち破った。どうやら体力が半分を切ったらしくそれで打ってきたんだと思う。
そして、私たちは攻撃を仕掛けていく。プギーを筆頭に回復班の回復も間に合わずちらほらと死に戻っていく人が多数いた。
私も、陽炎が夢幻地獄によって消滅してしまったためにもう一人生み出す。
だがしかし、やってみると今現在半減しているステータスなのにまたそれが半減してしまった。
まじかよ。これじゃあMPの無駄遣いだ。
魔力も400ほど。始めたときよりは多いかな? って程度であり、多分、他のプレイヤーからみたら威力はあるにせよ、火力に乏しいといえる。
半減の半減だからな……。つまり元のMPや魔力の4分の1。微妙……。
「本体に戻ってMP回復しよう」
この状態なら翼がない。
羽根をもぎ取って回復することはできなくなっている。回復するためには本体に戻れとのことだ。もちろん本体がやられたら私もやられるんだけどね。
樹の中に入っていく。
あーじっくりと回復……。
あっ! 指揮権私に委ねられてるじゃん! 回復できないじゃん!
このままでも声って出せるのかな?
『みんな! 突撃!』
あ、出せた。
枝をわさわさ揺らし、精霊樹の葉を降らせる。回復班の魔力が心もとないためにこれで回復しろとの意味も込めて。
さて。今回は私は手を下さない。
初めてだね。私が指示してるだけだなんて……。
『一応攻撃と防御上げておこうか! トロフィさんが最高火力だと思うからトロフィさんにもかけて!』
プギー…もとい、妖精王という種族は回復特化でありここにいるプレイヤーの火力として魔王が一番だと思う。
いや、傭兵の人の中にも高火力いるとは思うけどね。
本来は獣王ガガトツさんか、ロトさんがいればよかったんだけどねえ……。
『ロトさんログインしてるのになにしてんだろ』
本来、RPGにおいて魔王を討伐するのは勇者なもんだ。
精霊は勇者に力を貸し、精霊王は泉で静かに精霊や世界を見守るだけ。妖精は気ままに暮らし、獣王は戦いに勤しんでいる。不死王は……わからない。
RPGというものはこんなもんじゃないかな? 少なくとも、勇者が主人公だよね。
と、今度は通知が入った。
《こちらチリン。魔王軍幹部なんとか討伐完了。そっち向かうね》
チリン達は倒したらしい。
《おうミキ。俺もそっち行くからなァ!》
とガガトツさん。
ガガトツさんが来てくれるのは僥倖。一気に火力が増える。
やっぱり体力の減りが尋常じゃないほどに少ない。防御力も上がっていると思う。トロフィさんがずっと攻撃してもこんな感じで。
きちんとした攻略法もあるんだろうけど、それはわからない。
火力でゴリ押すというのも一つの点だろうけど時間がかかる。弱点を探してみようか。
とりあえず今鑑定をしてみようか。
――――――――――
・狂った精霊魔王 Lv.80 HP:18000/40000
称号:王への復讐
王への復讐:王と名のつく者(進化後も同様に扱う)からの攻撃を99%カット、王への与ダメージを50%追加する。
――――――――――
なるほど。トロフィさんが与えられない理由はこれかぁ……。
『厄介だね……』
一番火力が高いのは王だ。
だがしかし、称号により耐性がついている。なるほど。露骨だなあ……! でも待ってほしいんだよね。王って名のつく者からの攻撃は無駄だってこと。
神となっても無駄なようだ。
……だがしかし、一人だけダメージを与えられそうな人がいる。
『ロトが来てくれれば……!』
王と名のつく者。魔王、精霊王、妖精王、機械王、竜王、不死王、獣王と、あと一人? のダメージはらない。が、王と並べられてはいるが王と名のつかない種族の人がいる。
勇者。王ではない。
勇者が、この戦では火力が一番高いと思うから。
『……私は絶対攻撃を受けちゃダメ。トロフィさんでも耐えられるかな?』
私がそうつぶやくとみんな固まっていた。
私たち頼りにしている面もあるのだろう。頼りにならないと聞いて焦る人もいる。
『で、この戦いに一番有利の人がいるんだけど……』
そういうと誰だよとの声が多数上がる。
それはもう定番だ。魔王の宿敵と言えば誰だというか。
『ロト。たぶん、一番活躍できると思うんだよね』
ロトは今なにしているのだろうか。
久しぶりにですね、力仕事したら肩がぶっ壊れました。超痛え。
本当に痛い…