心なき魔王と精霊神の大木 ②
TS表現があります。少しだけですが。
私の下ではプレイヤーが魔王と戦っている。
まあ、魔王は私を倒さねばここを突破することなんてまず不可能なんだけどね。
……この大樹化も、便利。けど、木の根っこくらいでしか攻撃できないっていうのはものすごく不便だったりする。MPやHPを私の範囲内にいるひとは回復できるっていうのは一番の利点だけどね。
そしてなにより。実体化スキルは私のコピーみたいなステータスになるらしい。樹はそのままでね。
私は二人で一人。なにこれ。二人はプリ〇ュアかなんか? 私そっくりの人がもう一人いるとか軽く怖いけど……。ドッペルゲンガーだよ?
精霊神の存在は私がのっとるとか言われたら怖い。
「……俺も結構この姿になって驚かれると思ったが精霊王はその先を行くな」
「でっかい樹ですねー!」
そこまで驚くことじゃないでしょ……。
いわば私自身が精霊樹となるわけで。いや、多分もう使わないとは思うけど。
「死にそうなプレイヤーはこの樹の下に来てくださいねー!」
というわけで死にそうな傷を負ったプレイヤーは隙をついて戻ってくる。一気に回復するわけじゃなく、徐々に回復していくらしいので時間はかかるだろう。
そのわきで、精霊樹の葉っぱを落としてあげるといい。体力は半分、MPは基本的に全快するとか。
ま、そのためには私が本体に触れないといけないんだけどね。
なんだか変な感じ。この場には私が三人いるってことだよね……。
なにそれ。なにそのホラー。この樹も陽炎も私も私とか。ゲジュタルト崩壊起こさせる気なの?
「……ミキに指揮権を委ねよう。一番ミキが司令塔に向いている」
「えっ、わ、私?」
トロフィからそう指令を受け、他のみんなもうなずいていた。ええ……。
「……こほん。じゃあ、とりあえず攻撃していこうか」
プレイヤーたちはちまちまと削っていく。魔王も足止めされており大剣を振り回したり魔法を放ったり。やりたい放題だ。死に戻るプレイヤーもいる。
体力と防御が無茶苦茶高い。ソロなら苦戦しただろう。
まあ、苦戦するだけで勝てるとは……ちょっと思うんだよね。
と、その時だった。
魔王が、なにかしらの魔法を放つ。
「”夢幻地獄”」
そして、私たちの世界は暗転。
いや、形に変わりはない。だがしかし。だがしかしだ。
それは私だけである。
他のみんなは意識を失っているのか寝転がっている。ただ、ちょっとその形がおかしい。紫色の肌の肌をした女の子、羽根を付けた男の子。
もしかしなくてもこの人たちはトロフィとプギーだ。
紫色の肌の肌をしているのは魔王の晩餐を使ったトロフィしかありえない。羽根を持つのはプギーだけ。
……いや、性転換……しとるの?
「さすがに精霊の神には効果はないようだな」
「ふぁー!?」
もしかして夢幻地獄って相手を強制的に性転換させるやつなのこれ!? ネカマの人大喜びじゃないか! いや、私はかからなくてよかったけどね!
こ、これを解くことはできるか!
《スキル:天国の解放 を取得しました》
なにこれ?
とりあえず使用してみる! あっ、MPごっそりもってかれる。だけど、効果はあったみたい。
トロフィとプギー達が元に戻っている。他のみんなも。そして、起き上がったのだった。
なにこれ恐ろしい!
天国を解放したら戻るのか?
《スキル:天国の解放
効果:すべての状態異常、呪いを解除、少しの間無効化》
おいおいおい。なんで破格スキルが今手に入ったんだし!
……まあ、いいけどね! これで心置きなく戦えるからね! 取得条件とかまじでわからないけど運がよかったってことで!
「気が付いたなら畳みかけるよ!」
「え? 俺は夢を見てたのか? 夢の中で闘っていたんだが」
「うん?」
寝ぼけてないで! ほら! 私が援護してあげるから!
ミキは手を下さない……?
天国の解放取得条件:地獄と名のつく呪いを受け、抗うことで取得可能。
夢幻地獄とは?
プレイヤーたちが夢の中でボスと戦うことになる。勝つと目覚めまた魔王を討伐することになり、負けると死ぬことになる。
ただ倒したとしても現実では性別が変わってしまっておりまだ地獄は続く。
天国の解放を覚えた者が夢幻地獄に堕ちたものに天国の解放を行うと目覚めることが可能。
夢幻地獄はなかなか恐ろしい技である。
二段構えの地獄かよ。