人間の王国とのギルド戦 ②
はっきり言っておくと、ものすごく弱かった。
竜になったニルにビビるわ、炎が怖くて突撃してこない。かといって迂回もしない。手ごたえがなくて逆に困っていた。
「お前ら……! 化け物かよ……!」
「化け物じゃないよ」
私らは恵まれただけ。
王という者をもらった。ただそれだけ。だけれど、この王は実力で上回ることも容易だったりもする。基本スペックが通常より高いだけで下手な人が使えば普通に負けるのだ。
頭の使い方次第で、勝敗は変わる。私は、そう思っている。
「少なくとも、喧嘩売る相手を間違えたよ」
「くそが……!」
「私たちはあなたたちには負けない。バカ真面目に突撃してくるようなあなたがたは私たちには勝てないと思ってね」
要するに頭をうまく使えっていうこと。
押し切るだけじゃダメ。頭を使い、戦術を立てることが必須。そして、何より大事なのは自分たちの力を過信しないこと、相手を見くびらないこと。
対戦相手を格上だと思い戦術を立てるべし。
……まあ、ちょっと舐めプしてるような私が言えたようなことじゃないけどね。
「人間の王国さん。貴方は他のギルドを下に見すぎる風潮があるから。気を付けてね」
私は、模倣太陽を放った。
《人間の王国の戦力がすべて喪失されたことを確認いたしました》
《これにてギルド戦を終了します》
人間の王国の噂はいいことであることがまずない。
他人の獲物を横取り、メンバーを選び人間以外の種族は落とす……。まあ、人間の王国って名前だから人間だけっていうのは何の不思議でもない。が、落とすときには丁寧な言葉ではなく、乱暴だそうだ。
「……くそが。あんた程度に負けるのかよ俺らは……」
すべて事実っぽいな。
目の前には負けた人間の王国のギルドマスター、グレンがいる。グレンは渋い顔をしていた。
「……心外ですね。あんた程度ってのは」
「くそが……!」
「その態度を改めてください。程度と見くびるから負けるんですよ」
「うるせえ!!」
キレられた。救いようもないなあ……。
「人間の王国を解散しろとは言いませんが、近いうちに瓦解するとは思います。その時になにがあってもうちには頼らない、うちに関わるギルドの人との接触を禁じます。これでいいですね?」
「……ちっ」
「ローイさんのところにはいかせませんし、あなたがたには武器も卸しませんから。そのおつもりで」
ローイさんは有数の生産職トッププレイヤーだっていう話を聞く。剣の注文や武器の注文が多いらしく、うちにもよく連絡がきたりもする。
信頼できそうなギルドにだけ卸していたりもする。だが、人間の王国は、蹴落としていた。
それで鬱憤が溜まったんだろうなあ……。
「では、私はこれでいきますね」
もう関わりたくはないので、その場を後にした。
自称トップを走るギルドだからと言って何をしても許されるというわけではない。
少なくとも、名を知らしめてからそう語ってほしいものだ。悪い方向で有名ならば、トップとは言えないだろう。
……もう関わりたくない。思い出したくもない。
今日はログアウトして修学旅行の準備でもしようか。