ミキの怒り
プレイヤーが出しているお店っていうのは人気なところと人気じゃないところがある。
人気じゃないところは本当に人がいない。というか、有名なギルドにつながっていないのと、あとは立地条件が悪いというのも当たったりもする。
なので、腕がいいプレイヤーがいたりもするのだ。
そんなわけで比較的プレイヤーの店が多い第一層エリアに戻ってきました。
プレイヤーの大半はこの街を拠点として攻略をしているのでこの街は人口が多い。
かくいう精霊の守護者のギルドホームもここの街にある。
何が言いたいかというと、建て替えようかなって。
アプデでギルドホームの建て替えが可能となった。
ただしそれは大工というスキルを持っているもの限定であり、大工スキルがないと建て替えができないとのことだった。家具とかはカティさんが作れるんだけど、増築などは大工スキル持ってる人に頼めと言われた。
なので、探している。
と、なんだか争いごとが聞こえてくる。
「俺が先に頼んだじゃねーかよ! おめえは俺よりあっちを優先するってのか!」
「い、いえ。ただ、僕は……」
男の怒鳴り声。
と、気弱な男の人の声。どうやらも揉め事のようだ。私はこういう現場好きじゃないし、野次馬が多いなあ。なんて。
「いいから店長出せよ! ほらさっさとよお!」
「わ、わかりました!」
男の人が苛立っていたりする。
「てめーら! 何見てやがる! 見せもんじゃねーぞ! いいか? おめーらなんて俺が精霊神ミキに頼めば蹴散らしてくれるからな!」
と、言っている。
……はい? 私の名を勝手に使うって……どういう神経してるんだ? 頭おかしいんじゃないの?
「お客様。ただいま代わりました代表を勤めますギールといいます……」
「おうテメーかよ。なあ? 俺が先頼んでいたはずだが? なんで後から頼んだ”イフリート”の奴らを優先した?おい。ことに寄っちゃ精霊神呼ぶからな?」
また使いやがって……。
「そ、それだけはっ! おやめください!」
「ならさっさと慰謝料寄越せよ。なあ?」
「は、はい!」
もう我慢ならない。
「……どいて」
私がそう言うと、道が開かれる。
「ねえ、随分と偉そうだね?」
「あ? なんだおめー? 俺に逆らうっつーのか? 精霊神呼ぶぞ?」
「ああ、呼んでみなよ。私は怖くないから」
目の前の男は私が誰だかわかっていないらしい。
「ほ、本当にいいのかよ!」
「いいよ? どうぞ? 私にフレンドメッセージを送れるならね」
「わ、私に……? お、お前……! い、いや、あなたは……!」
男は誰だか分かったみたいだ。
「どうもギールさん。私はミキって言います。精霊神という種族についてますが、貴方方を害するつもりはないのでご安心を」
「は、はい!」
「で? あなたは私の名前を勝手に使ってなにしてるのかな? 運営に電話してもいいんだけど?」
「そ、それだけはっ!」
「なら、それなりのものもらわないとねえ。そうだなあ、迷惑料、私の名前を勝手に使用、恐喝。300万で手を打つよ」
「はあ!? それはぼりすぎだろう!?」
そうだよ。ぼりすぎだよね。
「でもさ、私が運営に言わないだけ慈悲はあると思うよ? あ、下手な抵抗はやめてね? こう見えても、私、貴方程度は余裕で倒せるからさ。300万払うかBANされるか。どっちがいい?」
「わ、わかったよ! 払うよ! 払えばいいんだろ! 今すぐもってくらあ!」
と男が走っていく。もちろん逃げないように私も追いかける。踏み倒そうなんて考えは許さない。
そして、男には300万きっちり支払ってもらいました。
男は泣きながら逃げていき、私はさっきの店に戻る。
「はい。店主さん。迷惑料です」
「あ、ありがとうございます!」
三百万を渡して帰ろうとすると、拍手が巻き起こった。
「ミキさんぱねえ!」「こう見えてもっていうがあんたに勝てる人間なんてそうそういねえっての!」「さすが!」「可愛い!」「結婚して!」
ああ、なんかちょっと騒がしい!
どうしてこうなるんだろうか!
「私は出るよ。大工スキル持ってる人探さなくちゃいけないし」
「大工スキル? あの、失礼ですがここ、大工スキルを所持している人が集まっているところですが」
……なんたる偶然か!!
そりゃ誰だって勝手に名前語られたら怒りますよね。有名税ってもんでしょうか。
あのプレイヤーにもつながりがあるんだぞーって言っておけば怖いでしょう。ミキの性格を知っている人ならともかく、知らない人が多いので。