閑話 ある会社員の大罪
ここはA2O開発課。俺はそこで働くしがないサラリーマンだ。
運営はこの課だけで回している。課というが、人数は相当のもので一個会社は作れるんじゃないかというくらいには配属されている。
それほど人材が必要なのだ。
だが、何もないときには害悪プレイヤーの対処などくらいしか仕事がないために暇だったりする。
なので、一部のプレイヤーの様子を見ていたりもする。
「こいつプレイヤースキルやばいな。りゅーんってやつ」
「りゅーんはストーリーが皆無な分新発見とかしているな」
「……ストーリーは、なあ。ちょっと強すぎたっていうか」
「ああ、あれはダメだろ」
と葬式状態になっている。
何を隠そう。強すぎたからだ。
「なにあの子。プレイヤースキルやばない?」
「あの音速を見て避けるってまずできねえぞ」
ザッハークの話だ。
あれは運営の悪意が詰め込まれている。音速級のパンチ。それをコンマ1秒で躱すミキは運営にとって恐ろしく見えてしまった。
「他の王たちが霞む……」
「スキルに恵まれ、種族に恵まれ、PSにも恵まれ。神様与えすぎだろ。少しでも俺に寄越せ」
そして、今度はミキの映像になる。
「……なあ。いやな予感がする」
「このダンジョンってさ、あれだろ? ヴァンビーの」
「ああ。ヴァンビー覚醒後は魔法耐性をもりっもりにして尚且つ防御も上げた俺たちの悪意とも呼べるあの代物。火力も申し分なくて苦労するはずだ」
「なのに……」
「「「「「「「なんでこうも恐れている?」」」」」」」
おかしい。こいつは相当強くしたはずだ。
それでこそ、クリア不可能のように。だからこそ、やばい報酬を置いた。クリア不可能……だよな? そうだよな? これでクリアしたりとかは……。
「……一発で覚醒?」
「……覚醒した?」
ヴァンビーの体が大きくなる。
それに驚きを隠せていない。
その状態は削りにくいだろう。それでこそ、全部の魔力をやる感じで。そう。あの俺たちの悪ふざけとも呼べるあのスキルを獲得さえしなければ……。
ミキというプレイヤーは俺たちの悪ふざけに当たりすぎてる。
せめてほかの人に譲ってやれよといいたい。
それはいいとして、ヴァンビー。負けたらわかってるだろうな? おい。負けるなよ。
「勝てー! ヴァンビー!!!」
だが、その声援は絶望に変わる。
ミキの手に浮かんでいるもの。それは、俺が危惧していたあの悪ふざけ。その名も、模倣太陽。
これは俺が酔っ払ったときに『太陽作れたらいいんじゃないっすかぁ~? 太陽ってめちゃつよでしょ』と上司に言ったらマジで採用されちゃったもの。
これやったときバカじゃねえのって思った。
「おい。その太陽はやめろ。そんなもんぶつけられたら俺たちのヴァンビーは……!」
「「「「「「「「やめろおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」
俺達の希望はなくなった。
そして、その後上司に呼び出された。
ザッハーク。ヴァンビー。模倣太陽。
大体考えたのは俺です。はい。あの、アニメとかに出てくる吸血鬼とかかっこいいよなあ、紳士にするのいいよなあ、蛙のモンスターなかなかいなくね? とか考えて作ったんです。なぜか俺の悪ふざけが拾われていくという事実やめてください。
あと、これからの開発、気を付けます。悪ふざけしません。なのでクビにはしないでください。
ミキが強くなっているのはだいたいこいつのせい。