レッツ、ダンジョン! ⑤
本気を出すことにした。
集中力を最大限にまで高め、魔法を放つ。
もちろん、躱すだろう。だが、あらかじめ、躱す軌道先に魔法を放っていたら? タイミングよく放つにはコンマ1秒の誤差程度しか許されない。
集中すればできるんじゃないか?
「ナパーム!」
ナパームを早く射出する。
「甘いですよ。そんなむやみやたらに魔法をぐほぉ!?」
かかった!
「甘いのは貴方だよ。私の本気舐めないで」
「こんの……侮っておりました。貴方はお強い。私も本気で行かせてもらうとしましょう」
さすがにワンパンまでにはいかなかったか。
ただ、さっきので体力が大幅に削れている。あとナパーム1~2回放てば終わるであろうこの体力。楽勝だと思いたい。
「私の本気は恐ろしいですよ。ぐふふ……貴方方の恐怖の表情が今にもわかります!」
と、どんどん肥大化していく。
ダンジョンの天井に顔が付くほど巨大になったヴァンビー。それを見上げる私たち。だが、勝てないわけじゃない。
なにが本気だ。私だって負けるものか。
「死ぬがいい! 巨大な拳は、躱せはしない!」
「”上昇気流”」
風魔法の一種だ。
風で押し上げる。
「か、風が……!」
「どうしたの? 早く攻撃しなよ」
「くっそおがあああああ!」
と、今度は地面に手を入れ、地形を変えた。
地面がみるみる盛り上がっていく。その瞬間に精霊魔法で土を元に戻す。ばーか。ゴブリンキングの二番煎じだよ。
「ぐぬぬ……」
「ミキ! 大丈夫か!」
「師匠! 大丈夫ですか?!」
「うん。大丈夫」
気づけば私一人で闘っている……。
「私一人でやってるのなんで!?」
「い、いや。邪魔しちゃいけないかなって」
「別にいいのに……」
「どこを見ている!」
と、右手が振り下ろされた。
油断していた。あっぶない。油断大敵だって第三回イベントで痛感したはずなのに。まだまだだな私って。
「大方ナパーム弾乱射ァ!」
このデカい的だ。適当にうってもそりゃ当たる。
さっきのように二段構えで打つ必要は皆無だ。
だが、魔法抵抗力が高くなっているのか、あまり削れなくなっている。覚醒すると物理のほうが強くなるってことかな。
だとすると私は相当やばい。けど、魔法が効かないっていうわけじゃないでしょ?
なら私に必要なのはパワーアップだ。
「火と風を配合し、新たな魔法を放つ!」
火は酸素を取り込むことで大きくなる。ならば、風でその酸素を送る。火力は増していくこと間違いなしであり、その温度は無限に広がっていくだろう。
疑似太陽の出来上がりっ!
《スキル:模倣太陽を取得しました》
スキル獲得。
この模倣太陽は、とてつもなく暑い。作った本人は大丈夫だけど壁際に寄っている人たちは暑いといってダウンしている。
まあ、これでも食らわせるか。
「吸血鬼は太陽の光に弱いとか言ってるよね。なら、これは効くのかな?」
「……させるか!」
「その反応が答えだよ。じゃ、バイバイ」
私は、模倣太陽をヴァンビーに投げつけた。
《ダンジョンボスを撃破しました》
そういったアナウンスが聞こえたのだった。
次回予告通り。
ミキ半端ないって! もぉー!
アイツ半端ないって!
疑似太陽創り出すもん……。そんなんできひんやん普通。そんなんできる? 言っといてや。できるんやったら……。