レッツ、ダンジョン! ④
ミソノさんたちは難なくモンスターを倒し、奥へと進む。
道中はそんな苦しくもなく、問題はボス戦からとなった。私も心して臨む……。いざっ!
ボス部屋には、一人の人間がいた。
人間……ではない。シルクハットをかぶった紳士のような男。だが、その口は笑っていて、歯がとがっている。もしかしてこの人は……。
「よく来ましたね 私は吸血鬼のヴァンビーと申します。以後お見知りおきを」
柔らかい物腰でいう吸血紳士。
私たちは構える。
「おや、最近の若い子は血気盛んのようで……。いいでしょう、わがダンジョンを攻略し、ボスまで辿り着いた貴方方には、特別に相手をしてあげます。私を楽しませてくださいね?」
そして、ヴァンビーとの戦闘が始まった。
ヴァンビーはまずユートに狙いを定めたのか一直線に向かってくる。剣を突き出すが当たらずに躱され、拳を振りかざされた。
やばい……!
「精霊魔法、光!」
吸血鬼は太陽の光が弱点なんだろ? なら、光で応戦だ!
「むぅ……。精霊魔法を放つやつがいるとは……! だが、魔法などでは屈しはせぬ!」
「くぅ」
私が放った魔法は躱されたのだった。
そして今度は私のほうに蝙蝠を飛ばしてきた。鑑定してみたら吸血蝙蝠。つまりこいつの眷属。私は魔法で撃ち落とすと、目の前にはヴァンビーがいた。
やばい……!
私は寸前に避ける。
「あっぶなあ!」
多分私の防御だと一撃受けたら即死級だろうな……。
躱し、距離を取る。距離を取り、作戦を練るが、狙いを私に決めたのか考える暇すら与えてくれない! 押し切られることはないけど考える時間がない!
「むぅ。私の攻撃を避けますか」
「伊達に躱し続けてないからね!」
「化け物だよな。ほんと」
外野五月蠅い!
「どれ、こっちにきやがれ吸血鬼! ”神速””覇王斬り”」
と、ユートさんが突撃するがダメージを与えることができない。どうやらこの敵、素早さとかしこさが高いみたいだ。吸血鬼だから多分腕力も相当ある。
これ、やばいな。
かしこいのならまず私から潰すはず。それか、ミソノ。
「……よし」
倒す算段はある。
この勝負、まだ負けちゃいない。絶望的に勝率が低いというわけでもないからまだ楽勝の部類だろう。少なくとも、この吸血鬼は一人の王よりはスペックはないはずだ。
ただ単に、私よりレベルが上なだけ。
なら大丈夫。勝機は、見込める。
「阿修羅!」
まずは阿修羅化をする。
そして、魔法を同時に放つことにした。阿修羅になることに意味がある。この状態はめちゃくちゃ強化された状態であり、プレイヤーなら大抵はワンパンのほどだ。
だが、当たらなければ意味がない。
ならばどうするか?
頭の悪い方法ならかずうちゃ当たる作戦がある。その名の通り下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってこと。だけど、もしも全弾当たらなかったら?
そう考えると、違う作戦だ。
「ほほう。阿修羅……。面白いですね。あなた。私の眷属にしてあげましょうか?」
「遠慮しておくよ。私は従うっていうより従える方が得意だからね」
「そうですか。残念です」
と、素早くこぶしを振る。それを躱す。
「マジかよ今の躱せるのかよ……」
「喋らない! 体力がものすごく減ったわね」
どうやら攻撃を受けたらしい。
まあいいさ。私は、ちょっと本気を出すよ。タイマンなら、本気出せるからね。
やめて! ミキの本気のせいで吸血紳士と戦ったら吸血紳士の魂が燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでヴァンビー! あんたがここで倒れたら、ダンジョンや眷属たちとの契約はどうなっちゃうの? HPはまだ残ってる。うまく攻撃を当てられたら、ミキに勝てるんだから!
次回、「ヴァンビー死す」。デュエルスタンバイ!