ローイ工房と専属
ローイ工房を訪れると、相変わらず鉄の打つ音が響く。
鍛冶で必要な炉も赤く光っている。相変わらずすごいリアリティだ。
「ふむ。専属か」
ローイさんに専属の話をしてみると、なんだか考え込んでいた。
「お前のとこと専属を組むとカティとも組めるということだよな」
まあ、そういうことになるだろうね。
一応は持ちつ持たれつでやるし、協力もしてほしいからさ。
「ただ、うちを贔屓にしてるやつもいてなあ。そいつからも打診されてるんだが」
「贔屓にしてる?」
「知らねえよな。”人間の王国”ってギルドだ」
「へえ」
「そいつらからも専属になれって言われて悩んでるんだが……さらに追加してくるか。魅力はどう考えてもお前らなんだが」
何やら申し訳ないことをした。
こういうのって大事だよね。どちらか選ぶというのはやはり辛いと思う。ただ、私の近くで鍛冶をするのはサンぐらいしかいないし、専門的な人はいない。サンもまだまだ未熟だって自分で言ってたし。
知り合いにも鍛冶してる人はいないし、ローイさんに頼みたいけど、ダメだよなあ。
「ふむ、分裂するか」
「分裂?」
「ギルドを二つに分けて親ギルドと子ギルドに分けるんだ。親ギルドは俺を含む数人。子ギルドはそうだなあ。おい、ギャオース。お前子ギルドのギルマスになれ」
「うっす」
と、あっさり決まった。
「じゃあ、まずギルド抜けるっすね。そして新しいギルド申請するっす。何人か引き抜いていくっすよ」
「おう。構わん」
なんだか申し訳ないことをしたなあ。
「うし。まあ、早速同盟結んじまうか。俺ら“ローイとその子分たち”は“精霊の守護者”と同盟を結ぶことを約束する。剣や防具は精霊の守護者を通す。その代り素材は採取してきてもらう。これでいいな?」
「はい」
「んじゃあ契約だ」
《ローイとその子分たちは精霊の守護者の同盟が成立いたしました》
《同盟が3つ成立いたしましたのでこれ以上は不可能となります。なお、破棄した場合はまた可能となります》
どうやら同盟はこれ以上できないらしい。
カティの森林工房、ローイとその子分たち、切り拓くバカ共と同盟を結んだ私たち。結構すごいギルドにはなったと思う。知名度もそこそこあるし。
「うし。そいじゃ、早速カティと共同研究にしゃれ込むとするか。その防具、もうその身にはあわねーだろ? 強化してやるから素材を取ってこい」
「わかりました」
「必要なのはとりあえず精霊樹の大枝と葉っぱか。大枝は第四層エリアで採取できるし、葉っぱも同様だ。ま、健闘を祈るぜ」
※後日談(ローイ視点)
どうやら人間の王国は俺を求めていたらしく、ものすごく非難が来てしまった。
ローイをこちらに寄越せだの、精霊の守護者なんていうわけがわかんねえやつらと契約するのはどうかとも言っていた。
もちろんそんなこと言うやつらに契約するつもりはない。分裂させるといったが取り消すことにした。
「契約すんな。ギャオース。あのギルドはダメだ」
「うっす」
俺らだって選ぶ権利はある。
そして、契約を取り下げるということを聞いた人間の王国はマスター直直に訪問してきた。
「なぜ取り消した! 我らは攻略最前線にいるのだぞ!」
人間の王国は種族がヒューマンのみで構成されたギルド。
もちろん最前線にいることは間違いはない。たしかに四層まで入っている。だから?
「だからどうした? 精霊の守護者はお前らよりすごいぞ」
「どこがだ? 名前からするにただ精霊王を崇めるだけだろ? そんなやつらに劣るなど……!」
「ところがどっこい。精霊の守護者は今までのエリアボス討伐にすべて関わっているギルドだ。それに、最前線を名乗るんだったら情報は知っておけ。精霊王を崇めるんじゃなくて精霊王がギルマスだ」
「う、うそだ!」
「嘘じゃねえよ」
「か、仮にそうだとしてもなぜうちを選ばない! 俺らは人数も多いだろう! 多ければ多いほど素材を取りに行かせられるんだぜ!」
「俺らにも選ぶ権利はあるんだよ。わかったんならでてけ」
こいつらはめんどくさい。
最前線を名乗っているくせにボス討伐にかかわることすらしない。フィールドボスは倒しているらしいがな。まあ、まだ切り拓くバカ共のほうが最前線を名乗れるレベルだと言える。
まあ、今のところトップは精霊の守護者だろうがな。ワールドクエスト貢献度なら第一位だ。
「まあ、俺らはすでに同盟は組んである。今からカティとも組むつもりだ。お前らが入り込むすきはねえよ」
もう分裂させてしまったし、分家とも同盟を組んでおいて、カティと三つ使い切ってしまう。
だからもう無理だよお前らには。
「お、覚えてろよ!}
三下のようなセリフを吐いて逃げていった。
予め予告しておきますが、次の回からちょっと作者の暴走がはじまるかもです。エロスの方向じゃねーけど。