圧勝
初心者装備の人とPvP。ちょっと戦力差があってかわいそうなので自分は装備なしで挑むことにする。
まあ、防御力なんてあまり変わらないけどね。
「剣のスキル……。ふむ、最初に得られるスキルポイントで有効そうなのをとっておくか」
相手の準備を待っている。
たぶん私の余裕がちだと思う。さすがにステータスに差がありすぎるの。貧弱装備ってことで偏見持たれて弱いって思われたのかな。
まあ、たしかにずっと精霊の服だったからさ……。
そろそろ装備変えてもいいかも。
「さすがにあの人にはかないっこないって」
「はあ? あんな貧弱なのどうせ生産職だろ? 生産職には負けねえよ」
「そうじゃなくて……ああ、もう。ぼこぼこにされちまえ」
友達? 彼女? どっちかわかんないけど忠告を無視していた。あの子私を知ってるんだ。
「準備はいいかな?」
「おう。待たせたな」
と、剣を持ち立ち上がる。
「どうなっても知らないからね……。では、はじめ」
私は軽く火の玉を放つ。それを避ける男の子。
避けることはできるのか。
「”居合切り”」
と、素早く懐に潜り込み、刀を振る。
それを、後ろに軽く飛んで躱す。そして、下に闇穴を作っておいた。
「うおっ!?」
片足をそこに突っ込んでいた。抜け出せないのか足を引っ張っている。
その隙に火の玉を放つ。
「ちぃ! ちっこい火の玉なら当たっても大丈夫か……」
と、火の玉が当たる。そして、一気に体力が削り取られて私があっけなく勝利したのだった。
ちっちゃい火の玉でワンパン……? いや、ちょっとオーバーキル気味かもしれない。けど、まあ、私の勝ちだよね。
「はい。おしまいっと」
PvPが終了した。
対戦相手はそこに座ってこちらを睨んでいる。何で負けたのかわかっていないのか、あれは本当に火の玉かと呟いていた。
もちろんあれは火の玉だ。
「無謀なんだよ。あの人は特に」
「なんで、だよ。あの人はなんか特別な人なのか?」
「そりゃね。第一層から第三層ボスに全部関わってるし、それにあの人は……」
と、女の子が私を見る。
「すいません。うちのキュータが。あの子ゲームは本当にうまいんですよ? ただ、自分のレベルがわかんないだけで……。井の中の蛙ってやつです。許してもらえませんか?」
「気にしてないよ」
「おい。その人はどういう人なんだよ」
「……精霊王。こういったらわかる?」
「っばか。精霊王様なんてこんな第一層にいるわけないだろ?」
「いるよ。それに、他の王の皆さんもいるからね」
と、周りを見渡している。
あ、気づいていたんだ。
「まあ、機械王はいないけどね」
「そうなんですか?」
「そうだよ」
「へえ……。あ、私ローズマリーっていいます。フレンドになってもらえませんか?」
「うん。いいよ」
ローズマリーからフレンド申請が送られてきて許可する。
「えっと、キュータ、だっけ? 私は精霊王……今は精霊神か。精霊神のミキ。ちょっと第三陣の人に興味があって戻ってきたんだ」
「……本当に精霊王?」
「そうだよ」
「……そうなのかよ」
と、男は去っていった。
「ごめんなさい。あの子めちゃくちゃめんどくさい性格でして……。しばらく近づきたくないので一緒に行動してもいいですか?」
「……いいけど、何も考えてないよね?」
「……私もめんどくさい性格だって思ってるんですか? それはちょっと心外ですよ……」
「あ、ご、ごめん」
「めんどくさくない人間なんてこの世にいませんって」
「この子めんどくさっ!」