第2話
05/27投稿
暗くなった森の中で焚火をしている。辺りは昼間とは違い焚火に照らされた木がたたずんでいた。
「火があるのはいいんだけど、どうするか考えてなかったな・・・」
鋭いチャートをナイフ替わりにして上着の胴の部分を切り裂いて布を作っていた。そしてその布で何枚かのチャートを杖にしていた棒に縛り付け長物、槍もどきを作ってふと顔を上げた。
「やばい、風が出てきた」
急いで今ある持ち物を回収してあらかじめ掘っておいた穴に入り込んだ。それと服はわざと地面とこすり合わせ、苦し紛れの匂い消しをして穴に寝転がった。
「・・・そういえばモンスターってるのかね?」
不安になって辺りを見渡す。焚火の音と変わらなく照らされている森。しかし、意識して何かを見つけようとする。無意味と分かっていても警戒だけは怠らない。
気が付いたら落ち葉にまみれて白けた空を見ていた。
「寝てたのか・・・」
自分のことなのだが他人事のように言い、気を紛らわして落ち葉を掻きわける。
「ん・・・?」
やけにふさふさして気持ちのいいものがあったので落ち葉をのけてみたらそこには上着と布、それと人一人分くらいの大きな毛玉があった。とりあえず手製槍の石突【槍の刃の逆側のこと】でつついてみた。
「犬?狼?なんだこいつは」
もそりとイヌ科と思わしき動物が上体を起こしこちらにのしかかってきた。枯れ葉がくっついているがその毛並みに
「うおおお!もふもふするぅ!」
と思わずもふもふしてしまう。するとイヌ科特有の大きな尻尾で顔をわしゃわしゃされる。そして気に入らないといわんばかりにさらにのしかかってくる。
「おも・・・い」
普通に考えれば当たり前だが大型犬ですら成人男性を押し倒せる力はあるのだ。ましてや人間大の動物にのしかかられては身動きはもちろんのこと呼吸することが難しくなるのだ。
「勘弁してくれ」
きつい呼吸状態でなんとか言葉をひねり出す。また、なぜそんなことを言ったのかは自分自身わかっていなかっただろう。しかし、その動物は顔を少し見て膝の上あたりで寝そべった。
「ハァ、ハァ・・・っふぅ。死ぬかと思った」
俺は呼吸を整えながら目の前の動物を観察していた。毛並みは黒に近いダークグレーとでもいえる色合いで顔つきは柴犬のような忠犬といった顔つきではない。まさに狼。口から見える犬歯は獲物を噛み切り、絶命させる鋭さがはっきりとわかる。
とりあえず殺されてはかなわないので毛並みを整えるように手を櫛代わりにしてブラッシングしてやった。すると尻尾がゆらゆらとしているので、尻尾の様子を見ながら場所を変えていく。横腹をブラッシングしてあると徐々に鼻息と尻尾のふり幅が大きくなった。
しばらくそんなことをして戯れていたらソイツはおもむろに立ち上がって俺の上着を銜えた。上着を取られたが別に上着くらいならいいかなと思いソイツの好きなようにさせていたら。上着を置き俺の背中に頭をこすってくる。
「ついて来いってか?」
なんとなく言葉が分かっていそうなので聞いてみると上着をまた銜えて移動し始めた。仕方がないので俺は手製槍を手に持ちついて行くことにした。
前回から少し時間が空いてしまいました。申し訳ありません。