床の神様
さて、こっくりさん本番です。後半は勢いで書きました。後悔はしていない。
ローファーを変えたときの靴づれがやっと治ってきました
翌日の部室にて。
「さあ、少年。始めるよ」
満面の笑みを浮かべる栗原の手の上に自分の手を重ねる。
「これ.....こんなにでかくて効果あるの?」
「バカ、でかいからこそ面白いんだろう」
「そうだよ!きっとでっかい方が面白いって」
「いや、でもこれじゃあ何もおりてこないんじゃないのかな・・・?」
「少年。いいか。おりてくるんじゃない、無理矢理おろすんだよ」
栗原がもの凄いドヤ顔でこちらを見つめてくる。うん、軽くウザい。
あ、自己紹介が遅れました、八代尊です。どうぞよろしく。
今の一連の会話から僕らが何をしてるのか分かった人がいたら凄いと思う。あ、でも意外と分かるんだろうか?まぁそれは僕が当事者だから一生分からないんだろうけど。
で、結局僕らが何をやっているのかと言うと・・・・・そう、こっくりさんだ。一昔前、いやそれ以前だろうか。小学校とか子供の間で流行った低級な霊の降霊術。紙に五十音表とはいいいえ、それと男女、鳥居1から9の数字を書いてその上に十円玉をのせて占う奴だ。ま、僕らの場合紙が床で十円玉が段ボールのお手製と言う非常に適当かつ巨大なんだけど。僕は正直潜在意識説の方を信じてるんだけどね。
「さあ少年、後は任せたよ」栗原が先ほどまでしていたドヤ顔をやめて真面目な顔をしてこちらを見てくる。え、何を僕に任せたって言うんですか栗原さん。僕こっくりさん初めてなんですよ?まぁ昨日一応wik○pediaで予習はしてきたけど。なんにせよ最初一人でする行動はないはず。というかこっくりさんは一貫して単独作業はないはずだ。あ、質問するときはもちろん除くけど。
「何をって....少年、最初のかけ声だよ。こっくりさこっくりさんおいで下さいと全員で言う為の」
......え、いりますかそれ。正直アイコンタクトでできるレベルのことだと思うんだけど。
「早く言えよー、この体勢けっこうキツいんだぞ?」
何故体勢が厳しいのか...その原因はこのこっくりさんのサイズに関係してくる。これは三上発案の巨大こっくりさんなのだ。先ほどの発言や掌サイズの10円玉でも分かるとおり。だから床でも色々書いてあるところには乗れない訳で。身体が大きい僕や栗原はまだ良いのだけど、身長145cmほどの桜田やふつうの女子くらいの三上はかなり厳しい体勢になっている。そう、それこそツイスターでもやっている様な感じに。
「おい、八代。聞いてるのか?早くしろっての!!」
桜田がすこしキレ気味に言ってきた。それもそうだろう、彼女の身体は既に限界に近いのか震えている。
「あー、はいはいりょうかいですよ。それじゃあせーのっでいくからな?いくよ、せーのっ「「「「こっくりさんこっくりさんおいでください」」」」
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「来ねえじゃねえかっ!!」
30秒ほどたったところで我慢できないと言ったように桜田がわめく。キツいんだろうな....身体の震えが激しくなってる。
「ちょちょっと待っててゆきちゃんこれからこっくりさんに来てるかどうか聞くから!!」
三上が桜田をなだめるようにしていう。
「こ、こっくりさんこっくりさん、いらしてますか?」
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十円玉は動かなかった。ぴくりとも。僕らが手をのせたその状態でとどまっていた。
「うごかねえじゃねぇえかよおおおおおおお!!!!」
桜田が叫ぶ、と同時に十円玉が動いた。・・・・おぉ、動くんだね十円玉。十円玉(段ボール)はゆっくりとはいいいえの方へとうごいていく。みんなが見守る中、十円玉の行き着いた先は....いいえだった。
「どっちだよ」
思わず口から言葉が漏れる。いや、本当にどっちだよ。いなかったら動かないのにいいえってどういう事だ。
「・・・・はいって事と受け取っていいんだな?」
表情を変えずに栗原が言った。十円玉が動き出す。はい、とのことで。
「・・・・・・なんなんだこいつ。ふざけてんのか?」
桜田、こっくりさんにキレるんじゃない。そしていいえの方に動く十円玉。悪いんですけどあなた(こっくりさん)ふざけてるようにしか見えないですよ、ええ。
「そろそろまじめな質問をしよう。君は何の霊なんだい?」
ゆ・か。かの文字の上で十円玉がとまる。・・・・・ゆか?どういう事だ。こっくりさんで呼び出せるのって小動物とか低級な霊のはずなんだけど・・・・。
「床?・・・・・どういう事だ?」
栗原が俺と同じ疑問を浮かべる。すると誰も質問していないのに十円玉がまた動きだした。今度たどった文字は、つ・く・も・が・み。付喪神か。て、神様じゃないか。
「は、テメェ神様なんか?」
相手が神様と分かっても取る態度の変わらない桜田さんに拍手を。って脳内で一人コントをしてる場合じゃない。こっくりさんで付喪神をおろすなんてありなんだろうか.....。まぁ、そこらへんの詳しい事は分からないから、おりてきたって事はありなんだろう、きっと。
「へぇ....神様。しかも付喪神ってことは物に取り付く神様ですなっ。ん、ってことは・・・・」
ってことは?ってのはどういう意味なんだろう。三上の方を見る。
「他の物に乗り移るとか・・・できるの?」
いや・・・・できないんじゃないんだろうか。確か付喪神って99年使われて捨てられた妖怪のはずだし...。
はいの方向へ動く十円玉。・・・・・・できるんだ。
「ほぉー.........」
今、三上の目がきらっと光った気がするんだけど...気の所為かな?
「じゃ、じゃあ尊のシャツとかにも、移れるって....こと?」
おい、何を聞いてるんだお前は。桜田に,栗原もそれを見てにやにやしてないで止めろ、ていうか止めてくれ。お前等中学の頃からの知り合いだろうが。十円玉もはいの方向に動くんじゃない。
「おぉ!!じゃ、じゃあ移ってみせてよ!!」
目を輝かせながらぶっ飛んだ提案をしないでくれ三上。頼む。桜田達も止めてくれよ、昨日の奥義とかでさぁ!!十円玉こらはいの方向にうごくんじゃねぇっっっっ!!!!
床が、光りだした。灰色に汚れた床が白い光をすこしづつ、次第に強く発するようになる。それと共鳴するように光る僕のシャツ。おいいいいいいいい、お前等何がしたいんだよおおお!!!おおって顔で見てないで早く止めてくれって!!こちとら展開早すぎてついていくのに必死なんだから!!頭の中で処理してたら口に出すまでに時間かかるんだから処理が追いついてないんだって!!
シャツと床の光が一層強くなる。もう目を開けているのが辛い。思わず目をつぶったけど、まぶた越しでも分かるくらい教室とシャツが輝いてるみたいだ。
不意に、まぶたの内側が真っ暗になる。どうやらもう光が収まったみたいだ。おそるおそる目を開ける。
輪周りを確認すると床に書かれていたこっくりさんの紙の役割をなす文字達は消えていて、その代わりに僕の服のなかで銀髪の獣耳の少女がぴょんぴょんと跳ね回っていた。
さて、ぶっ飛び展開ですね
あ、後神様や妖怪に関してはこちらの世界でのるーるを独自に考えてありますので、突っ込み話という事で