僕の入部届け
尊くんは結局入部するんでしょうか、どうなんでしょうねぇ....。
ローファーを新調したので靴づれができて辛いです。
結局、僕は上手く返答する事ができずお互い見つめ合ったまま校門で固まってしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
他の生徒達が校門前で硬直する男女を横目で見ながら帰宅していく。あぁ、気まずいなぁ。でも、そんな怪しげな部活には流石に即返答は......と僕はぐずぐずしていた。というか普通するだろう、昔の知り合いに呪研究部なんて怪しい部活に誘われたら。すると不意に、彼女がカバンをごそごそと探り始めた。何をしているのかと見ていると、すっとノートとボールペンを取り出しノートに何かを書き始めた。彼女は二・三行書き付けるとびりぃっとノートを破り僕に押し付けながらこう言った。
「明日の放課後ここに来て。見るだけでもいいからさ、来ないとダメなんだからね」
そういうと彼女は返答を聞かないようにするべきなのか足早に行ってしまった。ノートの切れ端を握った僕を放置して。昔から面倒を嫌う人だった。こういう変だったり妙に硬直してたりする状況も。もどかしいのは嫌いだったっていってのを覚えている。今日ひさしぶりにあったけど、やっぱり可愛かったな....。なんて脳みその中がめちゃくちゃで支離滅裂な事を考えながら僕は彼女を見送っていた。
と、ここで現実世界に戻ってくる。
あ、挨拶が遅れました。八代尊です、どうも。
ここまで回想していたらやっと少女達が地面への落書き(勝手にそうきめた)を終えたのか顔を上げて伸びをする。ん〜っと気の抜けた声を上げてウニウニと動いている。もし終わっていなかったら小学校の頃の回想も始まっていたかもしれない。いやぁ、危なかった。
「いや...つかれたね〜、もーダメ、あたし一生分のマジック使ったかもしれん」
「こっくりさんて元の台紙みたいなの作るのにこんなに疲れたっけ....?」
「大きすぎるんだよ、ふつうは机の上でやるってことを知らないのかい?」
説明しよう。最初の馬鹿げたコメントをしたのが黒髪さん、真ん中のだいぶ常識的なコメントがが三上、最後の少々辛辣なのがライムグリーンさんだ。三人とも俺を無視して口々に今回のこっくりさん(多分)の感想を口々に言い合っている。相も変わらず僕の存在をスルーして。
・・・・そろそろ怒るよ?僕自分でも言うのなんだけど結構心は広い方なんだよね、多分。小学校後半から中学の最後まで喧嘩をしなかったのだからきっと広い方のはずなんだ(これ以上無駄な事に脳みそを使う訳にはいかないのでとりあえずそういう事にした)。
「えーと......あの.......そろそろ良いですか?」
流石に我慢の限界だったのでこちらから声をかける。いつまでも待っていると思うなよ。僕の声を聞いてやっとその存在に気づいたかのように三人がこちらを見る。黒髪さんとライムグリーンさんはなんだこいつと言った様子で怪訝そうにこちらを見ていて、少しの間を置いて三上のみがあっと何か思い出した様な表情をしてこちらに向かってきた。そして僕の隣りに立ち口を開く。
「新入部員の、八代尊くんです。今日から入部という事で仲良くしてあげてくださいねっ」
転校生を紹介する学校の先生の様な調子で三上が言い放った。もう決定していて、覆す事ができないと言った雰囲気もこめて。教室内が騒然とする....なんて事はなくて、それとは正反対のマジックを動かす音すらない静かな時間が訪れる。遠くから聞こえてくるのは運動部のかけ声だろうか.....って
「「ええええっ!?!?」」
教室内に二人分の驚きの声が重なって生まれた。黒髪さんと、僕の口から放たれた驚嘆の声が。何故かライムグリーンさんはそのまんまの体勢で固まっている。これも驚いているからなのだろうか。
「ちょちょちょちょっと待って三上、僕まだ入部するなんて行ってないけど!?」
「ゆいっち聞いてないよ、うちらの活動は学校非公認でこの三人でやるんじゃなかったの!?」
二人に追求(?)され三上が少したじろいだ。黒髪さんの台詞が少しおかしいなと感じたけどスルーしておく。とりあえずは自分の問題を片付けないと。
「あ、あははは。まぁまぁ二人とも落ち着いて....」
三上が必死に僕らを落ち着かせようとする。
「いやいやいや僕紙押し付けられて見るだけなら良いかなって思って来たのにもう入部決定ってどういうこと!?
第一僕正直入部するつもりないから!!!」
正面からとりあえず自分の言いたい事を直接伝えた。すると、三上が気まずそうな顔をしてポケットに手を突っ込む。そして少しくしゃっとなった紙を取り出した。それを僕の方へ差し出す。
なんだろうと思い受け取り、内容を確認する。それは....なぜか僕の名前が書かれていてその上先生の承認の印も押された呪術研究部の入部届けだった。
思わず固まる。何故だ。何故なんだ。何で僕はこんな放課後に床に落書きしている様な珍妙な部活に入らなきゃいけないんだ。そりゃ昨日声かけられたときは嬉しかったし家帰って考えた結果試しに仮入部でもしてみようかなって気にはなったよ?前好きだった人からのお願いだ。今も好きだし。それに幼なじみでもある。正直断るのを少しためらっている自分も居た。でも本人の許可なしに勝手に入部届けだすのは不味いでしょ。流石に。ねぇ?一人でごちゃごちゃと考えている僕の前を、不意に小さな手が視界を遮るように僕とプリントの間に割り込み、脳内に閉じこもっていた僕の意識を引き戻す。
「やぁ、少年、意識はあるかい?」
声のした方には、いつ移動してきたのかライムグリーンさんがにこやかに笑いながらたっていた。あ、やっぱこの人でかい。180あるんじゃないの?
「少年、君を我が椛谷学園高校呪術部に歓迎するよ、よろしく頼む」
そういって彼女はにこっと微笑んだ。あぁ、良い笑顔.....。さっきは見えなかったけど意外と可愛いんですねライムグリーンさん...。
「......夜見がいうならしゃーない、よろしく八代。ようこそ呪術部へ」
黒髪さんがライムグリーンさんに便乗するようにため息をつき、気怠げに長い黒髪を弄りながら僕がこの妙な部活に入る事を許可してくれる。そしてその経過を後ろで見て満面の笑みを浮かべる三上。すかさずライムグリーンさんと黒髪さんの肩を組むようにしてこちらを向き、口を開いた。
「と、言う訳で。よろしくね尊っ!!」
あぁ、素晴らしい笑顔だね。その笑顔で戦争が一つ集結しそうだよ。だからその笑顔でごまかそうとしないでくれ。僕はまだこの部活に入るなって言ってないからっ!!!
この調子で毎日だいたい2000から3000字区切りで投稿していこうかと思います。
ぐだったらすいません。あ、あと、一応毎日投稿目指してます(需要ないけど)。