彼女の勧誘
完全に自己満足です。ライトノベルがかきたかった。
八代尊は困惑していた。
目の前で薄暗い部屋の床に這いつくばるようにして何かを記している少女達(多分同級生だが)を見て、言葉を失っていた。
ひたすら地面にマジックペンを滑らせ、きゅっきゅっと言う音をだしながら書き続けている。
なぜか三人称視点で語っているけど喋っているのは僕、つい最近まで中学三年生だった八代尊です。
ども、こんちは。
さて、状況整理に戻ろう。まぁ先ほども話した通り、前方には3人の女子。床に何か描いている、現在進行形で。ちなみに僕は教室の入り口のちょうどドアを開けた状態で突っ立っていた。小学校の頃の知り合いに呼び出されたため、やってきたこの教室の扉を開けた状態で。
・・・・・・・・どういう事なんだろう。
なんでこの方々は僕の事を無視してひたすら作業を続けているのだ。正直何を考えているのか全く分からない。まぁ面識がないから当然と言ったら当然なのだけど。
という訳で女子の観察から入ろうと思う。(どういう訳だ)人の第一印象は外見で決まるからな。かなり重要なことのはずだ、うん。と勝手に自分の中で定義して始める事にした。
まずそれぞれのいる場所として一番手前に一人と、奥に二人が並んでうずくまっている。
一番手前の方は床まで垂れる長い黒髪が特徴的だ。残念な事にこちらに背中を向けている為に顔は視認できないけど。そして彼女は床に広がるそれを気にせずにひたすら作業に没頭している。補足として体勢の問題でパンツが見えている。色は白だ。
次に奥の二人。片方は俺の幼なじみであり小学校の頃の知り合いで唯一名前の分かる存在、三上結衣。茶色い肩までの長さの髪に高校生とは思えない童顔と身長が特徴である。その隣りにはなぜかライムグリーンというか蛍光緑と言うか、そんな感じの色合いの髪の毛を持つ女子。これまた知らないお方で地面にうずくまる様な体勢の為顔が見えない。というかこの子でかくないか?うずくまってるからそこまではっきりしないけど....。下手したら僕より大きいかもしれない。で、まあ奥の二人も手前の黒髪さん同様に僕を無視している、いい加減に気づいてくれ。薄暗かった部屋に光も入ってきてるだろうし扉が開いた音もしたはずなんだ。おい、気づけよ。と心の中で念じるもののもちろん届くはずもなかった。
なので、彼女達が書き終わるのを待つ事にする。かなり集中しているようだし、邪魔するのも悪いなと思ったので。というか真剣な方々に声をかけるほどの度胸を持ち合わせていなかったんだ。
・・・・・・暇だ。
この部屋に入ってから、少なくとも十分は経過したであろう。
やる事もないので勝手に教室の奥から椅子を引っ張ってきて座っていた。
僕は一応呼び出されてここに来たはずなんだけど、なんだこの扱い。
別に憤慨とかそのレベルで怒ってる訳じゃない、けどもちょっとイラっとする。
器が小さい?気にしないで欲しい。....という訳で(どういう訳だ)暇つぶしもかねて僕がここに来た経緯でも振り返ろうかな。
そう、あれはある晴れた春の日の事だった・・・・というほどでもないんだけどね。
でも晴れた春の日の事は確かだ。ていうか本当最近の事なんだけど。
入学式が終わって数日後、やっとだいたいの教科のオリエンテーションが終了し、通常授業が始まりだした日の事だった。まだ教室での交友関係はあまり構築できておらず、僕は一人寂しく帰ろうと校門へ向かう。そう、これ以上もないほどの哀愁を背中に漂わせてるつもりで。
「おー....お?ねぇねぇ、私の事覚えてる?」
不意に声をかけられて、それと同時に肩をつかまれる。
半強制的に後ろを向かせられることで180度ほど回転した視界の先には、僕よりも背が低くちょうど見下ろせるくらいの背丈の女の子が立っていた。
懐かしい顔。
3年ほど前までは毎日のように向き合っていた顔がそこにあった。
機嫌良さげなニコニコ顔を、ためらうことなくだしている。
彼女の名前は三上結衣。僕の幼なじみであり、初恋の相手だ。
中学から男子校に入る事が決定していた僕は小学校の卒業式、この日に人生最初のかなり大きな賭けをした。聡い人ならもうここら辺で分かるんじゃないだろうか?
そう、愛の告白だ。まあ結果から言っちゃうと敗北だったんだけど。
「あ.....うん、覚えてるよ。ひさしぶり、だね。」
ちょっとぎこちなくなりながらも返答し、小声で「忘れる訳ないけどね」と付け足す。
「ん.....何か言った?」
相変わらず耳聡いなぁ...。
「ううん、別に。で、突然どうしたの?僕なんかに声かけてきて」
すると何かを思い出したように彼女が喋り始める。
「うん、尊はさ、もう入る部活とか決まってる?」
尊、この声に自分の名前を呼ばれるのはかなりひさしぶりな気がした。
一応卒業した後も何回か会ってるんだけどね。
「いや、別に....特に入りたい部活とかもなかったからさ。三上はもう決まってるのかな?」
「もちろーん、このゆいっちをなめてもらったら困っちゃうなー!!」
自信満々、と言った様子で彼女は答える。小学校の頃からそうだった。常に元気一杯で根拠不明の自信に満ちあふれていて。いつも人の輪の中心に居る恒星みたいな娘だった。3年たっても変わってないな、この子は。
その事実に妙な安心感を覚え、少し顔がほころぶ。
「あ、でさでさ、物は相談なんだけどー......」
「んっと...何かな?」珍しくちょっと引き気味な彼女に違和感を抱きながら聞き返す。
「うちの部活に...来ない?人少なくてさー...つぶれそうなんだよね、呪術研究部」
呪術研究部、そしてつぶれそう.....いきなりだね、かなり。返答に困って苦笑いを浮かべながら相手を見る。
「あー、だからさ。うちのはいってる部活がつぶれそうだから、入って欲しいってこと。今部員3人しか居なくてさ....ほら、4人いないと部活として認めてくれないでしょ?だから...」
無言で笑う僕を見て彼女がそう告げる。うん、知ってる。うちの学校は4人以上の生徒が所属していないと部活として認めてくれないのだ。オリエンテーションで紹介を受けたからね。
いや、でもさ、ふつうの文化部ならまだ分かるんだけど.....じゅ、呪術部....?
好きな(だった)女の子のお願いだとしても....なんか....うん....。僕はただ苦笑いを浮かべるしかなかった。
かなり続く予定です。気長に頑張ります(見てる人いなくても)。