第六話 大決戦! モコネコ対ヤギイヌ
モコネコが自分の子供を保護したことを知らないヤギイヌは、自分の子供を探して走り回っていました。
「クオ―ン、私の子供がどこにもいないワン。どこ、どこなの?」
モコネコはその哀れな姿を見て、ヤギイヌに子供達を返そうと思いました。
「やはり、今のヤギイヌの乳も捨てられない。
子供Cは将来有望だが、もう後二、三年は乳を搾取できないからな。
こうなったら、子供をヤギ質にして、ヤギイヌを従わせよう。
子供を盾に取られたら、あのヤギイヌも従わざるを得まい。
少し強引だが、殺すよりはマシというものだ」
こうして、モコネコはヤギイヌと交渉に踏み出しました。
ヤギイヌは、モコネコを見て、怒りを露わにします。
「あー、この憎いモコネコ! お前のせいで私の家庭は滅茶苦茶よ!」
「ふん。元々、夫がいなくて滅茶苦茶じゃないのか? 一匹で子育てなんて無理だ!
オイラの所に来い! 一緒に生活しようじゃないか。
オイラには経済力も、お前とお前の子供を養う意志がある! お前が欲しい!」
(正確には、お前の乳でお金が欲しいだけどな……)
ヤギイヌは、モコネコのその優しい一言を撥ねつけます。なんと、恩知らずなのでしょう。
「そんな言葉に騙されないわ! 前の夫もそうだった……。
甘い言葉で私を誘惑しておいて、不要となったらあっさり私を捨てて、他のメスの所へ行ったわ! もう騙されないわ。
あの子達は、私が一人で育てるの!」
ヒステリーな雌は融通が利きません。そこで、モコネコは子供を会わせようと考えます。
「そうか……。でも、お前の大切な宝物の子供達はオイラが預かっている。
お前が素直にオイラに従えば、子供達に会えるんだぞ!」
モコネコがそう言うと、ヤギイヌは不敵に笑います。少し、危険な感じがしてきました。
「フン! 私にもあるのよ! ドクターブラックが与えてくれた特殊能力がね!」
ヤギイヌは突然姿を消したと思った瞬間、モコネコの腕に噛み付いて来ました。
「イッタ―イニャン!」
モコネコは突然の攻撃に驚きます。
「ふっふっふ、驚いた? 全身の毛色を、自由自在に変えることで背景と同色化し、まるで私の姿が消えたように見える隠れマントよ! これで勝負は決まったわね!」
ヤギイヌは、更に激しくモコネコに噛み付きます。見えない攻撃はかなり厄介です。
どうする、モコネコ?
「うう、痛いニャン! もうお前の乳など要らん! そこの崖にでも落ちるがいい!」
ヤギイヌの攻撃が仇となりました。いくら消えるといっても、攻撃の瞬間にヤギイヌの居場所は分かります。モコネコは腕を囮に、ヤギイヌを崖へ突き落とそうとします。
モコネコの攻撃は成功し、今度はヤギイヌが崖に落ちかけます。
「きゃあああ、くっ、落ちてたまるか!」
ヤギイヌは、崖っぷちの所で、爪を立てることによって、なんとか落ちないように持ち堪えます。
「ふー、なんとか耐えたわ……」
安堵したのも束の間、モコネコの連続攻撃はまだ終わっていません。
「ふっふっふ、ヤギイヌ君、君とはそれなりの付き合いだったが、楽しかったよ!
君の子供達は、オイラが育てよう! 君はここでお別れだ……」
モコネコは、ヤギイヌの爪を一本、一本、剥がしていく。
重さが耐えられなくなったヤギイヌは、断末魔の叫びを上げながら崖の下へ落ちて行きました。
真実はこうです。
実は、ヤギイヌは子供を失ったショックから、鬱病になっていた。
モコネコがヤギイヌを発見した時には、すでにヤギイヌは冷たくなっていました。
しかし、自殺では保険がおりません。
そこで、モコネコはヤギイヌの子供達のために自分が悪役になり、ヤギイヌの子供AとCが保険金を受け取れるようにしたのです。
これからの長い犬生、子供達の生活のために、どうしてもこのお金は必要だったのです。この事実は、私達の胸の中に仕舞っておきましょう。