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レオさまの帰還

ある意味、当然なのかもしれない。


学園にもたくさんの殿方はいるけれど、さほど話したこともないのだし。


話した事がある方は、概ねあの断罪の場面で糾弾者の立場にあった人達だ。婚約者もおいでだろうし、さすがにそんな気持ちにはなれない。


邸においでの殿方は、ほぼ妻帯者だ。特に私と接点がある方は確実にそう。やっぱりその辺りの危機管理はしっかりしているという事なんだろう、さすがはお父様。



好きな人。


なんて甘やかな響き。


資料館の本棚の間で本を選びながらも、頭の中にはどこかその言葉があって、私は少しぼんやりとしていたのかもしれない。



「どうしたの、難しい顔して」


「!?」



心臓が飛び出るかと思った。


振り返ると、久しぶりに見たレオ様の顔。なんだか日に焼けて少し精悍な印象になったかもしれない。


ついさっき、好きな人という言葉で思い浮かべた時に真っ先に出てきた顔だけに、私は動揺する心を押さえることができなかった。



「レ、レオ様」


「うん、久しぶり」



日に焼けた顔の中で、破顔した拍子に見えた歯が思いがけず白くて、私は一瞬ドキリとした。



「良かった、元気そうだね。体調崩したりしてないかなって、旅に出てる間も心配してたんだ。元気な顔を見て安心したよ」



本当に安心したようなレオ様の顔に、私は安堵と嬉しさが込み上げてきた。



「それはこちらのセリフです。無事で戻られて、本当に安心しましたわ」



賊が出ると聞いていたけれど、けがなどはされていないのかしら。心配でつい体に目がいくけれど、当然体を覆う服が邪魔して、けがの有無は分からない。ジロジロみていたのが顕著だったのか、若干顔を赤らめたレオ様に「どうかした?」と聞かれてしまった。


しまったと思うがもう遅い。恥ずかしい。



「いえ、賊が出ると聞いていたものですから、お怪我などされていないのかと心配で」



そういうと、レオ様はとても嬉しそうに笑ってくれた。



「心配してくれてたのか、ありがとう! でも大丈夫。これでも護衛を任されるくらいには強いんだって。マークのほかにも二人ほど雇ってたからさ、この機会にちゃんと捕縛してあらかた騎士団に突き出しといた」


「えっ! やっぱり賊に襲われたんじゃないですか!」


「そりゃそうだよ。それなりに身なりのいい少人数の旅人がいたら襲うでしょ」


「そんな、事も無げに! けがは? けがは無いんですか?」


「大丈夫、大丈夫。そんなたいしたけがじゃない。ほら、この程度」



袖をまくって見せられた腕には、生々しい刀傷の跡があった。



「おおっと、気絶しないで! 大丈夫だから!」


「ぜんぜん……ぜんぜん、大丈夫じゃないじゃないですか!」



想定外の深い傷に、冷静ではいられなかった。

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