レオ様はお疲れ気味?
「セルバさんが継続的な回復魔法? をかけてくださったんですわ」
それを聞いてレオ様は訝し気に首を傾げた。
「継続的……っていうと、その場で治癒するだけじゃなくて、まさか数時間とか持続的に治癒し続けてくれるって意味?」
「ええ、セルバさんによると多分、数日間じわじわと微弱な回復魔法をかけ続けているような効果があるそうですわ」
「そんな便利な魔法聞いた事ないけど」
「ええ、開発途中だと聞いております」
「開発中!? え、どういう事? 大丈夫なのかそれ!」
開発中と聞いて一気に不安げになってしまったレオ様に、私は昨日の出来事を簡単に説明する。でも、説明の仕方が悪かったのか、逆にレオ様を驚かせてしまったみたいだ。
「気絶した!?」
顔色を変えるほど驚きながらも声をおさえてくださるのがありがたい。レオ様は基本的にとても気の利くお方なのだ。
「ええ、ちょっと魔法が効きすぎたみたいで。でも、その後は本当に調子がいいんですのよ? 体中がポカポカあったかくって体の中からエネルギーが湧き出てくるみたい。今ならなんでもできそうな気がします。きっとセルバさんの魔法のおかげですわ」
安心してもらえるように「お肌もつやつやです」とおどけてみせれば、レオ様も「実害がないなら、いいけど」と矛先を収めてくれた。
まだどこか微妙な顔なのは、ルーフェスと同じで開発中だという魔法にやはり全幅の信頼はおけないからだろう。
「ちくしょう。セルバのやつ、株をあげやがって」
「え、今何か仰いました?」
なにか呟いたみたいだけれどよく聞こえなくて問いかければ、レオ様ははっとしたような顔で振り返り、にっこりと笑ってくれた。
「いや、俺も回復魔法かけて欲しいなーと思って」
疲れているのだろうか、そう思ってレオ様の顔をよく見れば、確かに目の下に何やらクマができている。いつも快活で元気なイメージだっただけに、私は少し驚いてしまった。
「まあ、クマができていますわ。お疲れなんですの?」
「はは、まあね。これでも結構忙しいんだよ」
そういえば、グレースリア様のハフスフルール侯爵家の家督を継ぐために努力なさっていると仰っていた。学生の身で家督相続の争奪戦に本気で挑むのはなかなかに骨であろうことは想像に難くない。
なんせハフスフルールの一族と言えば天才肌の実力者ぞろいだ。一癖もふた癖もある、実績を積んだ御仁達と争うんだから、並大抵の苦労ではないのだろう。
そう思って労えば、レオ様は困ったように笑った。
「うーんまあ、そっちもそりゃあ大変なんだけどね。今は生徒会の方の実務でも追われてて」