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分かった事は

「まあ、騒ぎ過ぎてしまってごめんなさい」


「いいや、いい宣伝になる。そのケーキの魅力を全面的に伝えてくれてるからな」



確かに我慢できずに頼んだ人達がいたのか、ブルーフォルカがいくつかのテーブルに運ばれている。



「本来はこの完熟手前が一番うまいんだが、この果実は色味の複雑さも売りでな」



綺麗だろう、と嬉しそうに店主さんが笑う。彼はきっと、このブルーフォルカという果実をとても愛しているんだろう。



「味も確かに強弱ありすぎるんだが、でもその若い果実の酸っぱさも熟した果実の甘さも、それぞれに旨味があるだろう? 個性の違いを楽しんでもらうのも一興かと思ってな。あえてひとつのケーキにしたててみたんだ」


「でもあの酸っぱいのはキツいよ〜」


「あ、でもわたしは結構好きだったよ」



カーラさんとエマさんの言葉に、店主さんは笑みを深めた。



「そうやって食べ比べてさ、味をあーだこーだ言うのも楽しくないか?」


「あ……」


「うん!そうだね!」



笑顔になった彼女達を、店主さんは嬉しそうに見て破顔した。



「いい返事だ!」



店主さんもとってもいい笑顔だ。この方はきっと、美味しいケーキを作りたい、食べさせたいという気持ちだけでなく、みんなが楽しく幸せになる事を考えているのね。


そう言えばこの店の看板メニュー、ラッツェだって皆でわいわい分け合って食べる事ができるのがウリだったわ。


ブルーフォルカを食べ始めたのか、あちらこちらの席で歓声があがる。女の子達の華やかな笑い声が店内に満ちて、私は一層幸せを感じた。



「宝石箱みたいに美しくて、しかもこんなに楽しいケーキ、私初めて食べましたわ。……とても、感動しました」


「ありがとな! 本当は看板メニューにしたいくらいオレも気に入ってるんだけどな。なんせ稀にしか手に入らねえ」


「さっきもそう仰ってましたよね、そんなに手に入りにくい物ですか?」


「ああ、今年は手に入っただけで儲けもんだ。そもそも下町の市場に出回る事自体少ないからな。競争が激しくてよ、苦労したぜ」



そう言えば、この世界には目立った四季がない。少しの寒暖差はあっても年中温暖な気候が保たれていて、寒い、暑いというのは地域によるのだ。そのせいか食材の幅は意外な程少ない。


むしろ肉類は野生の肉も使うし魔物の肉まで使ったりするから種類が多いかも知れないけれど、野菜や果物の種類が少ない。 邸で使われていた食材も一定で幅が狭いと思っていたけど、下町では両手で数えられるほどの種類しか流通していない。


そういえば女将さんも、変わった食材はべらぼうに高いし市場にも滅多に出ないから、商売には使えないって言ってたっけ。


もしかして、こんな風に町の普通の生活の中に、皆が困っている事って沢山隠れているのかも知れない。


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