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エマさんの熱意

「おや、いいのかい? 次はいつ入るかわからねえぜ?」



さすが店主さんは商売上手だ、上手く限定感を掻き立ててくる。案の定エマさんがふるふると震えだした。



「ええ〜っそんなあ、だってラッツェはいつでも食べられるじゃない。ブルーフォルカは今だけなのよ!?」


「それはそうですけれど」



でも、お高いんだもの。学生の僅かなお小遣いから捻出するには厳しい。庶民に人気のラッツェだって、良くて月に一度皆でお金を出し合ってシェアして食べるんだと聞いた。その倍の値段するケーキを、自分で買うならまだしも人に奢ってもらうなんて。



「エマったら今月厳しいって言ってなかったっけ?」


「ほかのものを全部我慢すればなんとかなる!」



私とカーラさんは顔を見合わせて、思わず噴き出してしまった。


いつもは大人しくってカーラさんの陰に隠れがちなエマさんが、こんなに自分の意見をグイグイ押し出してくることなんか滅多にない。


そんなに食べたいのか。



「笑わないでよ……二人はどんな味か知りたくないの?」



急に恥ずかしくなったらしく頬を赤く染めたエマさん。ちょっとだけ頬を膨らませているのが可愛いらしい。



「それは確かに。未知の味ですものね」


「そうよ、だってクリスティアーヌ様だって食べた事ないなんて、相当レアじゃない」



同意すれば、我が意を得たりと腕組みして深く頷いてみせる。今日のエマさん、本当に面白い。カーラさんなんか後ろを向いて笑いを噛み殺してるけど、肩がプルプルと震えていた。


ツンツンと手の甲をつつかれて視線を送れば、カーラさんが口元をふるふるさせながら頷いた。


そうね、カーラさんがいいならブルーフォルカで決まりだ。エマさんの言う通り、ラッツェはいつだって食べられるんだから。



「ブルーフォルカにしましょう、やっぱり気になるもの。私もちょっと出すわ」


「えっ、いいの?」



やっぱりちょっと懐が痛かったのか、カーラさんが胸を撫で下ろす。


いいの。だってこうして奢るだとか、これが食べたいだとか、そんな風に友達と言い合ってお菓子を選ぶ事自体、本当に久しぶりなんだもの。



「ご、ごめんなさい……! 今日はクリスティアーヌ様のお祝いなのに、ワガママ言って……」


「いいえ、私、嬉しいの」



そんなにシュンとしないで、本当に嬉しいの。



「さあ、食べましょう?どんな味がするのか、とても楽しみですわ」


「えーっと、後は人数分のコーストリッチェティーね、あと取り分ける小皿も!」



カーラさんがテキパキとオーダーを済ませ、店内に通される。


お店の中はなんだかとても暖かみがある、木の風合いを生かした内装だった。

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