表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/282

鍛えることは無駄じゃない

私のお願いに、二人はちょっと驚いた顔をした。



「正気か? 俺が教えられるなら主に剣技だが……クリスに剣技は難しいと思うぞ」


「剣技でなくてもいいんです、なにがしか身を守れる手段が欲しくて」



そう、お父様に相談したときは市井官には必要ないと暗に断られてしまった武芸を習いたいという気持ち。私はそれをあきらめ切れなかった。


学園を卒業するにはまだ一年半、週に一度としてもかなりの回数、私はこの下町へ来ることになる。護衛の方をつけていただけるのはわかっているけれど、やっぱり自分で僅かなりとも身を守れるという自信が欲しい。



「まあいい、鍛えることは無駄じゃない」



グラスを勢いよくあおって、マークさんが笑う。



「俺は武術関係、セルバは魔術関係と言ったな」


「はい、お時間がある時だけでもいいんです。なんなら基礎の型だけでも」


「セルバ、いけるか?」


「もちろん、まずは適性をみるところから始めるけどね」


「あ……ありがとうございますっ」



思わず勢いよく頭を下げた私に、セルバさんは薄く微笑んでくれた。



「貴族の令嬢が自分で身を守りたいなんて面白いからね。それに、この年から魔術を習おうなんてなかなかいないし、研究対象としても魅力的」


「研究対象」


「うん、通常高い魔術特性がある子供は早い段階で魔力の制御を習うもんだ。それに該当しなかった子が、成人に近くなってから魔術習うんでしょ? 貴重なサンプルだよ。……うん、面白い」


「……」



なんか、すごい無謀な事をしようとしてるんだろうか、私。



「フハッ」



思わず視線がさまよってしまった私の挙動不審な動きを見て、マークさんが噴き出す。



「言っておくが、武術も同じぐらい難しいぞ。護身術が主になると思うが、体力づくりと反射を鍛えるところから始めることになるからな」


「……は、はい」


「ダンスである程度体は動かしているだろうが、まったく別物だと思え」


「はい!」


「教えるからには容赦しない。さすがに傷はつかないように気を付けるが、ドレスに隠れる部分の痣くらいは覚悟しろ」



それくらいは覚悟の上だ。私は力強く頷いた。



「あの、報酬なんですが」


「報酬は親御さんから護衛費をたっぷり貰うから問題ない」


「教えていただくのは私が勝手にお願いしているので」



そう答えたら、マークさんは「まあ、そうだな」とバーグ酒をあおる。



結局話し合いの結果、鍛えていただいた日のテールズでの飲食代を代わりに支払うことになった。面倒がなくていいし、なにより私が働いて得たお金で支払えるのがありがたい。


本来その程度の代金で済むはずはないと思いながらも、私は二人のご厚意に甘えることにした。


ちなみにレオさんが終始隣で「ちえー」「俺もなんかしたい」とつぶやいていたのはご愛敬だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者の先日完結作品】こっちもオススメ♪

ここをポチッと押してね(^-^)

『魔法学校の無敵の首席騎士様は、ちょっとコミュ障、大型わんこ系でした』

先日完結しました。首席騎士様が強いのにカワイイとの感想を多数いただいております(笑)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ