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お久しぶりです

自分の分も含めてグラスを4つとみんな大好きナッツとチップスのおつまみをトレイに載せて、私は軽い足取りで三人のテーブルに歩み寄った。


マークさんは平気な顔して安いのに強いと噂のバーグ酒を水みたいに飲んでるし、レオさんはお皿を三つくらい並べてあれこれ楽しそうに摘んでは誰彼構わず話しかけてケラケラと笑っている。


真逆なのはセルバさん。コーヒーの香りをゆるりと楽しんでいるらしい彼の周りは、そこだけ別な空間みたいに静かな空気が流れていた。



ほんと三人とも全然タイプが違うのね。



改めて見ると面白くて、私はすこしだけ笑ってしまった。



「クリスちゃん、楽しそうだね。どうだい、久しぶりのテールズは」



私がテーブルに近づいたのを目ざとく見つけたレオさんが、気さくに声をかけてくれる。


そうそう、レオさんってこうだった。


不慣れで緊張していた最初の頃も、いつだってこうして声をかけてきてくれたのよね。軽い感じでこっちに警戒心を与えない。


邸を飛び出して女将さんに拾って貰ったはいいけれど、不安でいっぱいだった私にそれがどんなにありがたかったか。特に最初の頃は砕けすぎてもいなくて紳士だったし。



「やっぱり楽しい! このお店も女将さんもお客さまも、大好きなんだもの」


「だろうなぁ、全身からそういうオーラが漂ってるもんな」



レオさんの言葉に、思わず笑ってしまう。そんなに解りやすく反応してしまうだなんて少し恥ずかしいけれど、マークさんやセルバさんが頷きながら笑ってくれたから、良しとしよう。



「……どうだ、やりたい事は見つかったのか?」



バーグ酒をあおりながら、マークさんがさらりとそう口にした。



「はい、マークさんのおかげです。マークさんにあの話をしていただいた後、私、一生懸命に考えました」


「そうか」


「私、市井官になりたいんです」



マークさんを真っ直ぐに見つめて、宣言する。あの時マークさんが助言してくれなかったら、きっと目標なんて定めていなかったと思うから……本当に、感謝しているの。


ちらりと私を見て、マークさんは少しだけ目を細めた。



「この城下町で出会ってお世話になった方達にも恩返しがしたいし、でもこれまで疎かにしてしまっていた事にもきちんと向き合いたかった……家族のことも、学園のことも、他にも色々」


「なるほど」



マークさんが視線をさり気なく動かした先にはお母様。今は女将さんと何やら話しているみたいだけれど、マークさんの視線に気づいたのかほんの僅かに流し目を下さった。



「まだまだ頑張らないといけないんですけど、私、今とても充実してるんです」


「いいんじゃねえか? いい顔になった」



頑張れよ、とニヒルに笑うマークさんの横で、レオさんが「え、何? あの話って何!?」と何故か色めきたっているけど、私はとりあえずマークさんに及第点を貰えた気分になってとても嬉しかった。

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