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活気ある街

お母様が連れて行ってくださったお店は、多岐に渡っていた。


かなり高級なドレスを仕立てるような一流のお店から、護衛がいるからこそ勇気を出していけるような、裏道にある怪しげなお茶を売っているお店まで。



「クリスちゃん街にはね、いろんな側面があるのですよ」



お母様はそう仰った。



「クリスちゃんは町にいる時、表通りの安全で一番人通りの多い繁華街しか見ていないでしょう?」



もちろんだ。なぜなら治安はそれなりに良いとは言っても、一本奥の道に入るだけで途端に治安のレベルは下がるのだ、女一人で行ける筈がない。


そして逆に高級店が立ち並ぶエリアだって私にとっては鬼門だった。邸に出入りしている店だって多い。かなり印象が違う筈だとは思っても、商人の目は侮れない気もして、怖くて近くに寄れなかった。まあ、町娘には高級店エリアには敷居が高すぎるから生粋の町娘だって基本行かないらしいし。


今日はお母様がお忍びで来店するとお店側に告げてあったようで特に混乱はなかったけれど、本来ならご遠慮したいエリアだもの。



「大多数の民が利用する市場やクリスちゃんが働いていた食事処のように、誰もが安心して利用する場所もあれば、一部の上流階級や逆に貧困層が使う場所も多いでしょう。そのすべてに目を向けることも市井官には大事なことだとお父様が仰っていたわ」


「お母様……!」


「クリスちゃんだけで行くのは危ないでしょう? 今日は普段は見るのが難しいところを見せてあげようと思っていたの」



うふふ、と嬉しそうに微笑むお母様。単に一緒にお出かけするのを楽しみにしてくれているのだと思っていたら、しっかりと私の夢のためのことを考えてくれていたなんて。



「ありがとう、お母様」


「ルーフェスにもお礼を言って頂戴ね、クリスちゃんが市井に行けるようになった時のために、一緒にリサーチしてくれたのですよ。頻繁に行くことはできなくても、そういう場所があることを知っているだけでも考えるためのヒントになるでしょう」



あ、なるほど……。ルーフェスの疲れたような顔が目に浮かぶ、きっと休日を使ってお母様とたくさんの店を廻ってくれたのだろう。



「さあ、食べましょう? ここのシュトゥルーデルは生地がとても上品で絶品なのよ」



いくつもの店を巡ったあと、お母様のお気に入りだというカフェで絶品スイーツをいただきながら見る市井は、とても活気に満ちている。


街のそこここで立ち話している人たちはとても楽しそうで、路端で売るアクセサリーを見つめる女の子たちははじけるような笑顔でお互いにアクセサリーを当ててみては何かしら笑いあっている。呼び込みの声があちこちで響き、急に走り出した男の子を追いかけるお父さんも、待ち合わせだろうか人待ち顔の男の人も、誰もが表情豊か。


クリスとして慣れ親しんだ光景が、そこにはあった。

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