ついにこの日が
連載再開します。
クリスティアーヌのその後に興味がある方は、またお付き合いください。
不定期更新になると思いますが、コツコツと進めていきたいと思います。
やった! やった! やった!
ついに期末の試験で学年1位をとることが出来た!
私は張り出された試験の結果を前に、飛び上がりたいくらいの歓喜に包まれていた。
あれからさらに苦節半年、学年1位をとるのに結局1年近くもかかってしまった。なんせグレースリア様はもちろん、2位と3位を争っていたマルティナ様とアデライド様もとにかく勉強家で、この3強の牙城を崩すのが本当に難しかったのだ。
本当に、我ながらよくやったと思う。
まあ、マルティナ様とアデライド様とは定期的に勉強会を開いていて、マルティナ様からは歴史関連を、アデライド様からは宗教学を教えていただいているから、お二人のおかげとも言えるんだけれども。
「おめでとう、ついにやったわね!」
「ずっと頑張ってたもんね、これで街に行けるようになるんでしょ?お祝いにカフェ・ド・ラッツェのケーキ、食べに行きましょう!」
カーラさんとエマさんが満面の笑顔で祝福してくれる。
復学して最初に話しかけてきてくれたこの二人は、今ではとてもいいお友達だ。クリスとしてただの街娘の期間を過ごしたせいか、貴族としての生活や言葉使いをより窮屈に感じてしまう私にとって、庶民である二人との会話はちょっと気を抜くことができる癒しの時間になっていた。
「まあ、嬉しい。ラッツェのケーキ、みなさんがよく噂してらしたものね。私も食べてみたかったんですの」
「よーし!じゃあお祝いに奢っちゃうぞー!」
「おっ、太っ腹!」
「何言ってんの、二人で奢るのよ」
「やっぱり?今月キツいのに」
貴族と庶民の垣根を感じなくてすむほど、二人とは仲良くなれた気がする。
「おめでとうございます、クリスティアーヌ様!」
「良かったですね、応援してたんです」
「流石ですね!」
通りすがりの人達も声をかけてくれるようになって、これもひとえにカーラさんとエマさんが屈託無く話しかけてくれる事の効果なんだろう。
誰彼となくそんなちょっとした会話ができるようになった事が嬉しくて、私は思わず微笑んだ。
これから先、希望通りに私が市井官になった時には、色んな立場や階級の方と話したり交渉したりする事になるのだろう、そう考えたらこんな風に話しかけてもらえるようになった事はとても嬉しいことなのだ。
そういう意味で言うとレオさんなんか本当に凄くて、貴族から庶民まで本当に分け隔てなく付き合っていらっしゃる。そしてまたお友達がとにかく多いのもとても尊敬できるところだ。
私も、あんな風になりたい。
今回の試験でトップになって漸く城下町に定期的に行ける権利を得られたから、今後はがむしゃらに勉強だけに時間を費やすのではなく、もっと色んな方とお話しする時間をとっていった方がいいのかも知れない。
それにしても、ようやく……ようやく、街に行けるのね。
女将さんはお元気だろうか。お店のお客さんともまた話したりできるだろうか。マークさんやセルバさんとは、もう会えないのかな……懐かしい顔を思い出したら、急にドキドキ、ワクワクしてきた。
早ければ今週末のお休みには街に行けるかも知れない。
私はもう楽しみで楽しみで、胸の高鳴りを抑えることが出来なかった。