未来のために
今年最高学年になったグレシオン様は生徒会長に、クレマン様は副会長に就任した。
王族は最高学年で学園の自治を体験するという、半ば伝統に従ってなされた就任は、最初こそ一般生徒に冷ややかに受け止められたけれど、幾つかの伝統行事を済ませ制度改革を行う頃には随分と好意的な目が増えている。
「ふふ、レオも意外と頑張っていますし、少しは期待してあげて下さいませね?」
グレースリア様がいたずら気に微笑む。グレースリア様とお話しすると必ずと言っていい程レオ様の話題が出るあたり、やっぱり仲がいいんだろう。
「もちろんですわ、このところレオ様も人気ですものね」
そう、レオさんも生徒会入りしたのにはびっくりした。
会計担当らしいけど、貴族から庶民まで幅広く交友関係があるからか、生徒の意見を取り入れた起案を精力的に行う事で随分人気になっているという。
人間って色んな側面があるんだなぁと素直に驚いた。
まだまだ皆、もがいている段階だけど、確実に半年前よりは成長していると感じている。
あの時約束した『2年後』、誰もがしっかりと成長の証を持ち寄る事が出来れば、この国の未来も、民の生活の向上も、少しは期待できるんじゃないだろうか。
そのためにも、まずは目の前にいるこの高い壁を乗り越えなくては。
「グレースリア様、必ず追い越しますから」
もう一度宣戦布告して、背筋をピッと伸ばしてみる。
私が不甲斐ないばかりにグレースリア様に重い責を負わせてしまった。それなのに、友人のように親しくして下さる懐の深さには、感謝してもしきれない。
立派な市井官になって、家族に、下町の皆に、恩返しをしたいというのが目下の私の目標だけれど、今ではもちろんグレースリア様も私が恩返ししたい人の一人だ。
この世界で初めて出来た、ちっぽけだけど大切な目標。絶対に叶えてみせる。決意も新たに踵を返した。
歩きながら考える。
2位と3位のご令嬢……たしかマルティナ様とアデライド様、あの二人をお誘いして勉強会とかどうかしら。とっても優秀な方達だし、文官を目指してるなら今の内から親しくしておけば仕事もやりやすいかも。
今の私のモットーは『出来そうな事はやってみる』だ。我ながら進歩したと思う。
元々が投げやりに生きてきて、人よりも出遅れている私が普通にただ頑張ったってたかが知れている。目標を達成するには引っ込み思案でいるわけにはいかないのだ。
精一杯、やれるだけやってみよう。
未来に沢山笑えるように。
終
最後まで読んで下さった方、本当にありがとうございました。
一旦ここで完結とさせていただいておりますが、1年半の時を経て続きを書いてみようかと思っております。
蛇足と感じられる方もいるかと思いますので、ここでいったん読むのをやめてもいいと思いますし、クリスティアーヌの今後が気になる方は先へお進みください。
改稿作業も同時にやっていくかと思いますので、続きが気になる方はまた楽しんでいただければと思います。