時は流れて
私が学園に復帰してから半年。
たった今張りだされた試験の結果を見て、私は溜息をついたところだ。
無事に進級して3回生としての動きも板についたこの時期になっても、残念ながらグレースリア様にはまだ一度も勝てていない。
学年の上位1/3くらいをウロウロしていたのが、この半年でやっと上位10位くらいに顔を出せるようになったレベルで、今日の順位は9位。フェインさんを漸く抜いたところだ。
フェインさんは宮廷魔道士と兼務だから、本当はサラッと抜き去りたいところなんだけど。
「また順位を上げたんですのね。私も油断できませんわ」
「グレースリア様、ご冗談を。自分の不甲斐なさに落胆していたところですのに。まだまだ道は遠そうですわ」
「ふふ、2位と3位のご令嬢も、なかなか手強いですものね」
そうなのだ。この半年で目に見えて変わったのは、むしろここかもしれない。文官に実力採用枠が設けられると発表されてから、急に上位を女性陣が占めるようになってしまった。
特に2位と3位のご令嬢の躍進は凄まじく、今やグレースリア様を脅かす程の点数を叩き出している。
まだまだ相当頑張らないとグレースリア様にはもちろん、その二人にすら勝てそうもない。
「はい、ライバルが増えてしまいました。ですが元々自らの不勉強が原因ですからこれくらいは覚悟の上です。市井官を目指す心にブレはありませんので、今以上に頑張る他ありませんわ」
「あの二人も、文官志望ですって」
「はい、直接お声がけいただきましたわ。共に励みましょうと……お二人とも、大変情熱的でした」
それを聞いたグレースリア様はひとしきり楽しそうに笑った。
「そうでしょうねぇ、お二人は貴女が文官を目指している事を知って名乗りをあげたクチですもの」
「え?」
「公爵家の令嬢が文官を目指すなんて異例の事でしょう?制度が変わる時にこれほど良い宣伝はない……触発されて文官を目指す女性が増えていますのよ?」
思いもよらなかった。まさか自分でライバルを増やしていたとは。
でも、制度が変わっても応募してくる人がいなくては結局絵に描いた餅にしかならない。民は落胆してしまうだろう。
「では、三人揃って文官になれるよう頑張りますわ。グレースリア様の助けになれるように」
「ふふ、嬉しい。殿下達もやっと少しまともになってきましたし、卒業までに株をあげて下さると良いのですが」
「大丈夫なのでは?」