謝罪とこれから
呆然とクレマン様を見上げていた二人は、その言葉が撤回されないと理解すると、力なく肩を落としてトボトボと扉へと進んで行った。
扉の前で、最初に声を上げた男の子が振り返る。縋るような、切羽詰まった目が私に向けられているのは何故だろうか。
「ク……クリスティアーヌ様、本当に……本当にリナリアがどうなったのか知らないのですか?せめて居場所だけでも……!」
「ご、ごめんなさい、本当に何も分からないわ。学園にいない事を知ったのも10日くらい前の事ですもの」
「……そう……ですか。俺……申し訳、ありませんでした……」
咄嗟に答えはしたものの、当然彼の求める答えではない。ヨロヨロと覚束ない足取で出ていく姿は、いっそある種感慨深いものがある。
自分の処分すら分からなくなってもリナリアさんの行方の方が気になるなんて、彼は本当にリナリアさんが好きなんだろう。
「クリスティアーヌ嬢」
彼らが出て行った扉を見ていたら、いつの間にか残る男性方が此方を見て居住まいを正していた。
「先程の二人の分も含め、これまでの非礼の数々、本当に申し訳ありませんでした」
彼らの代表、と言った態でクレマン様が丁寧に頭を下げる。
「今は言葉での謝罪は無意味とお感じでしょうから、殿下に倣い、我々が自省して変わったのだと他者からも認められるよう、死に物狂いで修業致します」
男性方が一斉に頭を下げる。
真摯に言って下さっているのはとても伝わってくるけれど、男性方に一斉に頭を下げられるだなんて事は初めてで、なんだか怖かった。彼らとの間にレオさんがいなかったら、ちょっと震えてしまったかも知れない。
「分かりました。しっかりと、皆様が努力されるお姿を拝見したいと思いますわ」
それでも、毅然とした態度だけは崩さないように気をつける。彼らのためにも国のためにも、ここで私が甘い顔をするわけにはいかない。
彼らがこれを機に変わってくれれば、学園での評判も改善されていく事だろう。
「そうですわね、本気で取り組んだ方が良くってよ」
グレースリア様が何故かいたずらっぽい口調で言った後、扇で口元を隠して微笑んだ。
「今回の件を受けて、予てより検討されていた案件が実現に向けて動き出しているのですって」
クレマン様ですら知らないのか、男性方が僅かに緊張したのが伝わってくる。