求めるものは
「心配の内容によっては怒りますわよ?……まぁでも、本当にちょっとだけ心強かったから、許しますわ。クリスティアーヌ様を守って差し上げて」
「了解!」
嬉しそうに私の前に立ったレオさんは、どうやらグレースリア様とも旧知の仲らしい。本当に何だかよく分からない人だ。
「クレマン様、今日の所はお引き取りあそばせ。貴方方はまだ、謝罪出来るレベルにすら到達しておりませんわ」
「しかし、殿下も謝罪のためにクリスティアーヌ嬢を訪ねたと」
「まあ、本当ですの?」
グレースリア様が真偽を確かめるように私を見る。
「はい、ただ。謝罪を受け入れるかどうかは2年後まで保留するとお答えしました。本当に謝罪の気持ちがお有りなら、その気持ちを糧に変わったお姿を見せていただきたいと」
「まぁ……意外と言うのね」
グレースリア様が楽しげに目を細める。扇に隠された唇もきっと弧を描いていることだろう。
「殿下は今回の件を深く自省されたとのことで、ご自身の欠点を克服し王としての役割が全う出来るようになるべく、2年間死に物狂いで努力すると約束してくださいましたわ」
そこまでお話してから、視線を瞠目する男性陣に移す。
「ですから……もし皆様に謝罪の気持ちがお有りなら、殿下のように行動で示していただきたいのです。今謝罪のお言葉をいただいたとしても、私には、それがどれほどの重みを持つのか判断できませんから」
一息に言って、内心ホッと息をつく。視界の中にグレースリア様とレオさんが居るだけで、なんだか勇気が出てくるのが不思議だ。
「何それ」
男性陣の中から若干高めな声がした。声を発したのは少女のように可愛らしい顔の男の子。たしか下級貴族だったと思うけど……。
「殿下にその言い草はさすがに不敬では?殿下にそんな事言えるほど面の皮厚いんなら、リナリア虐めてたとしても納得です。案外ガルア様とリナリアが逃げたのだって、裏で糸引いてたんじゃないですか?」
「まあ…」
「えっ!?」
全体的に気になる所しかない発言だけど、ガルア様とリナリア嬢が逃げたって……どういうこと?
しかし、声をあげたグレースリア様と私を、クレマン様が目顔で制する。
「他にもそう思っている者はいるか」
男性陣の中の一人が目線を泳がせた。
「お前もか。面の皮が厚いのはお前達の方だろう。冤罪で彼女を糾弾しておきながら、詫びるどころか更に貶める発言をするなど……正気か?」
「あの調書には影宰相も関わっているのでしょう?果たして本当に冤罪かどうか」
目線を泳がせた男性が独りごちる。……影宰相ってお父様の事よね。要はお父様が調書をいいようにでっち上げたと言いたいんだろう。