表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/282

先輩の心配

迷っているうちに「そうか…なるほど」という、謎の納得コメントを残してグレシオン様達は帰っていった。


…なんだったのかしら、一体。


「さ、すっかり時間を潰しちまった。バリバリ働いて取り戻すよ!」


女将さんの威勢のいい声に、ハッと我に返る。そうだ、ぼんやりしている暇なんかない。


「はい!……皆さん、私事でお騒がせしてしまって、申し訳ありませんでした!」


まずはお客様へ、次いで女将さんとマークさんにもお詫びと感謝の気持ちを告げて、仕事に戻る。


この場所で働ける時間はあと僅か。半年間何も言わずに支えてくれた女将さんやお店の人達、そしてお客様達…ありがたさを噛み締めながら、一生懸命に働いた。




「…で?結局クリスちゃん、またここで働くの?」


若干決まりが悪そうなレオさんに話しかけられたのは、夕食の時間帯も近づく頃合い。


またフード達がくるのが心配なのか、レオさんはいつもよりも長く店で時間を潰していた。逆にマークさんはレオさんが来たら「後は任せた」的に部屋に籠ってしまったけれど。


「いいえ、ここで働くのは明日まで。その後は邸に戻って一週間猛勉強した上でまた学園に通うつもりなんです」


「……それ、クリスちゃんの意思?」


「はい、私これまでずっと色んな事から逃げてきたから……周りの人、周りの事、ちゃんと逃げずに向きあって行きたいんです」


深くは語れないから抽象的な言い方になってしまうけど、それが今の本心だ。


「そっか、クリスちゃんが自分で選んだんなら、俺も応援するよ。学園で困った事あったら頼ってくれよ?俺一応先輩だしな!」


そういえば、レオさんそう言ってたっけ。上級生でしかも男性だからそう簡単に頼る事も出来ないとは思うけど、そう言って貰えるだけでも随分と安心できるものなんだな。


「……レオさん、ありがとうございます!」


嬉しくなって微笑めば、レオさんは一瞬ポカンとした顔をした。


「ははっ、ホントにクリスちゃん表情豊かになったよな」


「女将さんと皆さんのおかげです」


「だよなぁ、ここで働くクリスちゃん、ホント生き生きしてたもんな。それがもう見られなくなるのはちょっと残念だな」


そう言いつつも何故か満足げな笑顔を残して、レオさんは帰って行った。




そして、その夜の事。


自分の担当時間が終わりお客様に混じって食事をする私のテーブルに、静かに誰か近づいて来る。


あら?

割と今の時間空いてるけど、相席?


そう思って見上げたら、神妙な顔のマークさんが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者の先日完結作品】こっちもオススメ♪

ここをポチッと押してね(^-^)

『魔法学校の無敵の首席騎士様は、ちょっとコミュ障、大型わんこ系でした』

先日完結しました。首席騎士様が強いのにカワイイとの感想を多数いただいております(笑)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ