SS_負けたくないのは、僕も同じなのかも知れない①
3/28に②巻が発売されます!
恒例の発売前後SSを数日アップしますので、お楽しみください。
今回も加々見絵里先生のイラストがべらぼうに美しいのですよ!!!!!
できれば書籍など買っていただけると嬉しゅうございます……!
夏期休暇を利用して姉さんとクーレイに行ってから一週間後、僕はひとり、王宮魔術師が住まう研究棟に足を運んでいた。
姉さんの護衛を務めているセルバに会うためにきたのだけれど、なんでも彼は急ぎの研究で缶詰めになっているらしい。
応接室に降りさせる時間も惜しい、用があるなら自室まで訪ねてくれ、なんてけんもほろろな取り次ぎに、若干苦い思いを持ちながら、僕は黙々と研究棟の階段を上る。
ていうか、どこまで登ればいいんだ。
あんなにひょろっとして筋肉も少なそうなのに、随分と高い階に部屋が設けられている。部屋から出る気を削ぐのが目的だったりしないよね?
ただ登るだけなのがしんどくて、どうでもいいことを考えながら足を動かしていたら、ようやく首からかけていたペンダントが軽快な音を鳴らし始めた。
受付で貰った、セルバの部屋が近づくと鳴りだし、部屋の中のセルバにも連絡がいくという、呼び鈴の代わりのような魔具だ。魔法省ときたら、便利なんだか余計なんだか、こういった不思議な魔具を精力的に生み出している。
階段の途中にある扉に近づくと、中から扉が開かれた。
「おや、珍しい。誰かと思えば」
愛想良くニコリと微笑むのは、見慣れた金色の髪、青い瞳、上品な紫のローブ。間違いなくセルバだ。
間違いなくセルバだ、けど……。
「ちょっと待って、大丈夫なの? えらくやつれてるんだけど」
金色の髪はボサボサだし、目の下には色濃い隈、何日寝てないんだ? と聞きたくなるほど青い顔。
「あー、平気平気。こんなのいつものことだから。で、なんだい? 君がわざわざ僕を訪ねてくるなんて」
そう問われて、僕は口ごもった。
「いや、やっぱりいい。ちょっとした頼み事があっただけなんだ。また落ち着いた頃に日を改める。邪魔して悪かった」
こんなに疲労困憊なのに、僕の個人的な要望でさらに疲れさせるわけにはいかない。この様子だと、受付の人が言っていたとおり、話す時間さえ惜しいだろう。
僕はもう一度「ごめん」と謝って、踵を返す。
「待って待って」
「うわっ」
いきなり腕を掴まれて、バランスを崩す。振り返ったら、セルバが面白そうに笑っていた。その笑顔すらも痛々しくて、僕は自分の浅薄さを呪う。
「君ってほんと、こういうとこクリスちゃんに似てるよね。大丈夫だよ、心配しないで。見た目ほど酷くないから」
「べ、別に似てるわけじゃ」
「はいはい。でも見た目が気になるだろうから、とりあえずは疲労回復しとくから安心して」
不本意な解釈をされたようだけれど、こんなやつれた相手に言い返す気にもなれない。しかも腕はがっちりと掴まれたままで、振りほどくのもなんだ。
「君がわざわざ訪ねてくれた内容がすっごく気になる。面白そうだから話してみて」
満面の笑顔でそういったセルバに、僕は問答無用で。部屋に連れ込まれた




