つい説明に力が入って
「見てください、レオ様! あちらのお酒、見覚えがありませんか?」
「あっ、もしかして俺がこの前クーレイで仕入れた、石倉古酒かな。それにあっちは……マゴックの海底寝酒?」
「正解です。レオ様が面白い酒を色々仕入れてくれるから、楽しみで仕方ないって酒屋のロートさんが褒めてましたよ。ロートさんの奥様は呑兵衛がますます呑兵衛になって困るって怒ってましたけど」
ひとしきり笑ったレオさんが、急に真顔になった。
「あれ? 酒屋のロートさんって……まさか下町の?」
「はい。女将さんがお酒を仕入れている酒屋さんを紹介していただいたんです。今回はお酒も料理もデザートも、貴族お抱えの料理人数名の持ち込みと、下町のお店数軒にもお手伝いいただいて、飲み比べ、食べ比べできるように色々なものを用意しようと思って」
「すごいな。シャレにならない高級酒もあれば、飲みやすい一般酒の中でも地方の珍しい銘柄が数多く用意してある。これなら名のある貴族でも飲んだことがないだろうし、逆に一般の生徒も飲み比べて楽しめるね」
「ロートさんが秘蔵のお酒をたっぷりと用意してくれたので、絶対にみなさんに喜んでもらえると思います」
「へえ……て、あれ? ちょっと待って、これ、まさか唐揚げ?」
「あ、やっぱりわかります? それ、女将さんのお手製ですよ、美味しいんですから!」
「美味しいのはしってる……っていうか、女将さんがよく学園パーティーの料理なんて引き受けてくれたね! 絶対にガラじゃない、って断られそうなのに」
「最初はとっても渋られました……でも、女将さんの手料理がすっごく美味しいって、私、知ってるだけに諦めきれなくて。市場や近くの平民も通うような飲食店に声がけして、色んなお店の人気のメニューも取り揃えてあるんですよ」
「なるほど、女将さんの心理的ハードルを下げたわけか」
「はい、それに色んなお店の色んな味が楽しめるほうが、食べる方も楽しいでしょうし」
「違いない」
「基本的に立食のパーティーですから、女将さんとも何度も一緒に試作して、揚げものや串焼き、パイ包み、チーズボールも一口サイズで小さな串で軽く刺して食べられるように工夫したんですよ」
「どうりで女将さんにしては可愛い盛りつけだと思った」
レオさんが褒めてくれて、私はやっと安心した。
盛りつけにもこだわって、華やかな色どりを意識しただけに、庶民の定番料理でありながら、パーティー料理にもひけをとらない仕上がりになっていると、私も自信を持っている。でも、やっぱり評判は気になるもの。




