紅月祭までの三カ月
それから紅月祭までの三カ月は本当に忙しくて、生徒会室に顔を出しても、全員が揃うことは滅多になかった。
思い起こせば一年前、レオさんと校内で顔を合わせることが急激に減ったのも頷ける。
この時期の生徒会役員は、本当に。尋常じゃなく。忙しいのだ。
今日にいたっては、生徒会室にいるのはグレースリア様ただ一人。でも、ちょうどいい。グレースリア様に相談したいことがあったから。
「グレースリア様、お時間少し、よろしいですか?」
「ええ、もちろん」
グレースリアさまのすごいところは、どんなに忙しくてもこうしてすぐに対応してくださるところだ。本当に頭が下がる。
「あの、紅月祭についてなんですが、食事やお酒、デザートは、これまで生徒会役員のお抱えシェフが腕を振るうのが通例だったと思うのですけれど、私、今回少し変わった取り組みをしたいと思っておりまして」
「ああ、下町のケーキ屋さんを使いたいという、アレね」
「はい、でもデザートだけではなく、お酒も料理も、幅広くたくさんの種類をお出しして、食べ比べて楽しんでもらおうと思っているのです」
「詳しく聞いてもいいかしら」
「はい。例えば料理も、一つの家のお抱えシェフだけではなくて、多くの方にお願いしての自慢のメニューを少しずつ用意すると、様々なメニューが楽しめますし、加えて下町で人気のメニューも取り入れたいのです」
「面白いじゃない。貴族と、平民の文化の融合、ということね」
「はい、やってみてもいいでしょうか」
「もちろん。でも、協力してくれるところを探すのが大変そうね。一見、腕を競うようにも見えてしまうでしょうし、特に下町のお店は貴族も多いこの学園に納入するのは勇気が必要でしょう?」
「はい……粘り強く交渉するしかないかと。ただ、貴族のほうについては、グレースリア様にもお願いがありまして」
「ああ、うちのシェフならいいわよ。問題ないわ」
「もちろんそれもお願いしたいのですが、できれば『陰に日向に』の会の皆様に手を貸していただけたらと思うのです」
「やだ、面白そう」
ニンマリと、グレースリア様が笑う。
「そっちは私が声を掛けるわ。料理と、お酒と、デザートね、任せといて! 生徒会役員の面々のシェフと、お姉さま方のシェフが揃えば、それはもうゴージャスなものができるわよ。特にお姉さま方は皆様、涼しい顔して負けず嫌いですもの。ああ、楽しみ!」
完全に口調が面白がっている。
ああでも、これで半分は用意できたも同然だわ。あとは下町のお店をどれだけ説得できるかにかかっている。これだけは、自分でなんとかしなくては。
「ありがとうございます! それでは私、さっそく下町のお店に交渉に行ってまいります!」
急いで生徒会室を飛び出そうとしたら、グレースリア様に、「待って」と呼びとめられる。振り返ったら、グレースリア様は不敵に笑っていた。




