動いてみないと始まらない
「それに、そんなに人気の役者がくれば、女性の関心はみんなそっちにいっちゃうからね、男はやっぱり面白くないよ、せっかくの紅月祭で女性陣がドレスアップしてくるのに、そのレックスっていう役者にオイシイとこ全部持ってかれるんじゃ」
それに続くフェイン様のストレートな発言に、私は思わず目が点になった。一瞬の間のあと、女性陣の華やかな笑い声が生徒会室に響く。
「えっ、なんか僕、おかしいこと言った???」
慌てるフェイン様に、グレースリア様がまだちょっと笑ったまま、楽し気に返す。
「いいえ、男子生徒代表の声を聴いた気がしました。貴重な意見をありがとう、今年も『ソルガ』はやめておきましょう」
「ですねぇ、女生徒は喜んでも、男子生徒が不満を持つのはフェアじゃないですもんねぇ」
「もっともです」
マルティナ様とアデライド様もしたり顔で頷く。
警備や安全面、コストといった現実的な面でなく、感情的な部分を汲んで議論が終結することもあるのが、少し面白かった。
「さあ、では役割を決めましょう! 食事、お酒、デザートの食料関係の調達はクリスティアーヌ様。下町に一番伝手があるのは貴女です、お願いできるかしら」
「は……はい、頑張ります!」
正直、不安だけれど……でも、まずは動いてみないと始まらないもの。
昨年レオ様が担当していたと思うから、コツを教えて貰えるかもしれないし。
「ルーフェス様、式次や招待状の発送などが始まるまでは、クリスティアーヌ様を手伝ってあげてください。一人でやるには大変な量ですから」
「はい、もとよりそのつもりです」
「フェイン様とアデライド様は演者を探してくださいませ。『ソルガ』ほどでなくとも、皆が楽しめる演者は様々いるはずです。コストの面はアデライド様が、舞台装置やライティングはフェイン様が主になって検討してくださいませ」
「お任せを」
「マルティナ様は私と一緒に、招待客のリストアップですわ。今年は特に、国政の指針も新しくなりましたし、殿下も王城で本格的に政務に携わるようになっておりますし、選定は慎重に行う必要があります。書記としての力と……星読みの力、期待していますよ」
「はい……ああ~~~、一番重苦しそうな役割ですぅ」
「そういう愚痴はお腹の中にしまっておいてくださいませ」
心の声が完全にでていたマルティナ様と、冷静にツッコミを入れるグレースリア様の対比がなんともいえず面白く、和やかな笑いのうちに、その日の打ち合わせは終わったのだった。




