自信を持てばいいのです
「さっきフェイン様がおっしゃった『基本は踏まえつつ、女性ならではの印象が残るように』という助言も、価値観の融合だと思いますし」
「そうとも言えるね」
「今は過渡期で、文官に平民や女性も多く登用されようとしていますし、貴族と平民、男性と女性も反目し合わずに、力を合わせる……融合させることが大事なんだろうな……と、思って……」
「どうしてそんなに自信なさげなんですか」
「アデライド様……だって、私しどろもどろになってしまって。みなさん、反応薄いですし」
「自分の考えなんですから自信を持てばいいのです。……それに私は『融合』、いいと思います」
「そうねぇ、確かに目指そうとしてるとこには一番近い言葉かも。なんとなく優しい感じがする語感も好きですわぁ」
「そうだね、実は僕、最初はもう少し力強い言葉をいくつか考えてきてたんだけど、『融合』の方がしっくりくるね」
マルティナ様とフェイン様が賛成してくださったところで、グレースリア様がルーフェスに視線を送る。
ルーフェスの顎が小さく頷いたのを確認したグレースリア様は、苦笑した。
「困ったことに私も賛成。つまらないわね、これからのキーワードを決めようというのに、熱い議論をする間もなく決まっちゃったわ」
「貴重な時間が短縮できたということですわ。次、行きましょう」
さすがタイムキーパー、アデライド様がバッサリ切る。
フェイン様がツボったらしく、笑い転げていた。
グレースリア様はちょっぴり寂しそうな顔をしたあと、扇子をバッと広げて声を張る。
「では、今年の紅月祭のキーワードは『融合』! さっそくですが、改めて例年行われている演目をベースに、今年の紅月祭のために必要なことを話し合いましょう!」
そこからの議論はとてもスムーズだった。
ここ数年の紅月祭の生徒側と王室含む学園側の評価の確認に始まって、継続すべき点と改善が必要な点の洗い出しを経て、諸々話が進んだところで、私はかねてから考えていたことを提案してみることにした。
「あの……私、デザートの搬入でひとつ検討したいところがあるのですが」
「あら、どこかしら」
「カフェ・ド・ラッツェという下町にあるお店です」
「ああ、女生徒に人気ですわね。なんでもシェアできる可愛らしいケーキを提供してくださると、聞いたことがありますわ」
「さすがにグレースリア様もご存知なんですね。私、なん度か行ったのですけれど、そのたびに新しいアイディアを盛り込んだデザートが開発されていて、楽しみながら食べられる工夫が凝らしてあるのです。食材にもこだわっていますし、店主の方も気さくなかたですわ」




