フェイン様、初めてかっこよく見えましたぁ!
「彼の交友関係って幅広いけど、貴族もそれこそ王族から最下位の爵位まで、平民も商人から冒険者まで本当に様々でしょ。まさに基本を押さえたうえで幅広く、だよね。僕から見たら理想的だけど、そうそうできることじゃないよ」
そう言われて気がついた。確かに、貴族が平民とだけ仲良くすればそれも陰口の元となる。
上位と行動を共にすれば腰ぎんちゃくと言われ、下位といれば子分を従えねばなにもできないと言われるものだ。
とかく貴族社会は槍玉にあがらないように動くのが難しい社会でもある。
誰とでもとても自然に仲良くしているように見えたレオさんは、実は彼なりの考えがあって、あの姿勢を貫いていたのかもしれない。
フェイン様の抱く、レオ様への人物評が意外だったのか、グレースリア様は少しだけ驚いた顔をした。
それを見て、フェイン様は柔らかな笑みを口元にのせる。
「せっかくだからもう一つ、昨年の生徒会からアドバイスをいいかな」
「なんなりと」
「キーワードを決めるといい。去年は『バランス』を合い言葉みたいに使って、議論が膠着するとその言葉に立ち返るようにしてたんだ。迷った時の指針になるよ」
「フェイン様……」
みんなの視線が自然、フェイン様にむく。
「え、なに?」
「初めてかっこよく見えましたぁ」
「副会長、って感じがします!」
マルティナ様とアデライド様が感嘆の声を上げるけれど、フェイン様は「初めてって」と納得いかない顔で。
意外とこの三人は仲がいい気がするのは気のせいかしら。
「まあ、とにかく! フェイン様の助言はもっともですわ! まずは、私たちが目指す紅月祭のキーワードを決めましょう。そのうえで、例年行われている演目をベースに、ブラッシュアップできる部分を検討すればいいんですわ」
「……融合」
気がついたら、口をついて、その言葉が出ていた。
「クリスティアーヌ様、いま、なんと?」
「あっ、すみません、なんだか急に『融合』という言葉が浮かんできて」
自分でも突然のことだっただけに、あわててしまった。
「その言葉が浮かんできた理由をしりたいのですわ。なにか思い当たることがあるのではなくて?」
なおもグレースリア様に追及されて、私は自分の頭にふんわりと浮かんでいたことを、自分なりに一生懸命に紐解いていく。
「ええと……昨年の紅月祭のことを、思い出していたのです。錬金科や魔術科の力も結集して、生徒も一丸になって紅月祭を成功させた感じが、とても素敵だったと思って……あれって、皆の力が合わさって、融合したからこそ、よりよい結果が出せたのだと思うのです」
「……そう、ね」




