いったいなにやってんの!
「ね、可愛いですよね、表情豊かで。ついかまってあげたくなってしまいます」
そう言いつつにっこりと微笑むコーティ様に、レオさんは「あげませんよ、俺のですから」と応戦している。
私を挟んでわざとそういうやりとりするのは、本当にやめて欲しい……!
「ですが君も遠征ばかりですからねぇ、常に彼女の近くにいられる私にも、充分にチャンスはあると思いませんか?」
「ちょっとコーティ様……!」
「あれ? あ、レオさんと会えたんだ!良かった!」
からかいが過ぎるコーティ様をとめようと声を荒げたところに、新たな声が響いた。
***************************
「いい大人が三人もそろって、いったいなにやってんの!」
宿屋に辿りついた私たちは今、ルーフェスにこってりと絞られている。
「それで? あの女たちをそのまま逃がしちゃったって言うの!? なに考えてるんだよ!」
「だ、だって、公に罪に問われてたわけじゃないし、捕縛する理由がないもの」
「あーもう! だから僕は言ったんだ、正式に罪に問うべきだって。父上も甘いんだよ!」
リナリアさんたちをそのまま放置してきてしまったことが、余程腹立たしかったらしいルーフェスは、イライラと部屋を歩き回りながら、あからさまに怒っている。
「……」
と思ったら、ルーフェスが急に黙り込んだ。
なんだか不穏な空気を醸し出してブツブツと呟き始めているのがなんだか怖い。
「最悪、暗殺っていう手もあるわけだけど、それは最終手段だな……」
ひええ、聞き耳なんか立てるんじゃなかった。めちゃめちゃ怖いことを考えてた!
「コーティさんは事情をしらないからともかく、レオさんはなんなの」
「なんかダメだった?」
「忠告なんかしてる場合じゃないだろ。なんでうまいこと言って確保してこないんだよ」
くってかかられたレオさんは、なぜかコーティ様と顔を見合わせて、小さく笑う。
「なに?」
「いや、別に純粋に忠告したわけでもないんだよね」
「ゴヨークが後ろ暗いところがある商人だとしっていて取引をしていたのか、どれくらい結びつきが深いのか、あれでわかりますからね。普通に聞いてもごまかされるのが関の山ですから」
レオさんが言葉を濁したところを、コーティ様がはっきりと言葉にしてくれた。
まさかあの言葉に、そんな裏が隠されていたなんて。
驚きのあまりレオさんを振り返ったら、苦笑しながら「そういうこと」と、肯定する。
いつも、誰にでも親切なレオさんだけに、リナリアさんたちにかけた言葉にもなんら違和感を感じなかったというのに、正直驚きしかない。




