表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】シナリオ通りに退場したのに、いまさらなんの御用ですか?  作者: 真弓りの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

243/282

悪いわね、コレが本当のアタシなの

「だからなに? 知ってるわよ、そんなこと」



憤然とした様子で「どいて!」と私たちの横を通り抜け、リナリアさんは山小屋の方へと歩を進める。


もちろんガルア様の鉄壁のガード付きで。


私たちを追い抜いて、鉱山のお爺さんのもとへ行くのかと思っていたら、なぜか彼女は、私達からそう離れてはいない地点で足を止めた。


……どうしてかしら、リナリアさんの細い肩が小刻みに震えているように見える。



「なによ、こっちの気も知らないで」


「リナリア……」



ガルア様も心配そうにリナリアさんを見下ろしている。


どうしたらいいのか分からないのか、ガルア様の両手が所在なく上下していた。



「勝手なこと言わないでよ」



キッとこちらを振り返るリナリアさんは、怒っているようにも、泣いているようにも見える。



「相手が危険な人物だって分かっても、取引するしかなかった。稼ごうって思ったら、危険だろうが何だろうがやるしかないじゃない」



そこまで言って、リナリアさんはガルア様をふと見上げた。



「そうね、ガルア様もとめたわよね」



そして、口元をいびつに歪める。



「でもね、余計なお世話だわ。お貴族様のアンタたちは知らないだろうけど、ちょっとした日雇いで稼げるお金なんて雀の涙なのよ。あんなのずっと続けてたら、あっという間にオバサンだわ」


「リナリア……」


「触らないでよ」



肩を抱こうとしたガルア様の手をピシリと叩き、リナリアさんがガルア様を睨み上げた。



「どいつもこいつも、むかつくのよ! 平民たちがどんなに苦労してるかも知らないでさ! ほんっと苦労知らずのおぼっちゃまたちは、親切ごかしてキレイゴトばっかり言うのよね。余計なお世話なのよ」



堰を切ったように、リナリアさんが不満を爆発させる。



「行商人も通らないような、ド辺鄙な村に勝手に連れていかれて、アタシがどんだけ迷惑したと思ってんのよ! 目が覚めた時は一瞬、絶望しすぎて死んでやろうかと思ったわよ」


「そんな、リナリア……」



ガルア様が、呆然とした顔で呟く。



「なに傷ついたみたいな顔してんのよ。当たり前でしょ! 誰が連れて逃げてくれってお願いしたのよ。ホンット、いい迷惑!」



重ねて言われて、ガルア様はすっかり意気消沈してしまった。


顔まで青白くなって、まるで生気が感じられない。その背中には黒々しい暗雲が見える。


リナリアさんの気持ちもものすごく分かるけれど、ちょっとガルア様も可哀そうなような。



「あの村から抜け出すのにどれだけ苦労したか!」



彼女の豹変ぶりに、驚きを隠せないのだろう。


そんなガルア様を見上げ、リナリアさんは不敵に笑んだ。そこにはもう、可憐さなどは欠片も見えない。



「幻滅したでしょ。でも悪いわね、コレが本当のアタシなの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者の先日完結作品】こっちもオススメ♪

ここをポチッと押してね(^-^)

『魔法学校の無敵の首席騎士様は、ちょっとコミュ障、大型わんこ系でした』

先日完結しました。首席騎士様が強いのにカワイイとの感想を多数いただいております(笑)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ