表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】シナリオ通りに退場したのに、いまさらなんの御用ですか?  作者: 真弓りの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

242/282

その前にひとつだけ教えてくれないか?

リナリアさんに詰め寄られて、レオさんは逡巡する。



「しかし……」


「私を邪魔しに来たわけじゃないってアンタ、さっき言ったわよね」


 

レオさんが迷っているからか、今度は私に矛先が向く。


でも、彼女の言う通り、私たちには今、彼女を阻むだけの強い材料なんかない。


確かに彼女には学園を混乱に陥れ、殿下を含む数多の男子生徒を誑かした咎がある。公爵家の娘である私を陥れたことも罪のひとつに数えられるだろう。


でもそれは内々に処理され、公に罪となったわけでもない。


最果ての村まで強制的に移送され、王都から遠ざけられはしたものの、表向きには単にガルア様が彼女を攫って逃げただけの扱いだ。


この宝石の件だって、彼女の言を信じるならば、王都から流れた宝石を買い付けただけで、組織だった動きでもなければ、今後も継続的に続く動きでもない。


その事実だけを見れば、彼女たちを拘束するのもおかしな話だし、彼女たちが自らのお金で買い付けた宝石を没収するのも横暴というものだ。


ただ、最果ての村から出る術を断たれていた筈の彼女たちがどうやって村を出たのかはとても気になるし、宝石類を多量に保持していることからも、また権力あるものにすり寄り、ことを起こす可能性がないとは言えない。


一刻も早く、お父様に報告しておかねばならない案件に思えた。



「もう! なんなのよ、早く宝石を返してって言ってるじゃない!」



またもキレそうなリナリアさんの様子に、私も決意を固めた。


現時点では彼女たちを捕縛することまでできるわけでもない。宝石を返すしかないだろうと思う。



「レオさん、返してあげてください」


「……ああ、すまないが、その前にひとつだけ教えてくれないか?」



宝石を返す、と私が言った途端、勝ち誇った笑みを浮かべたリナリアさんに、レオさんは生真面目な顔で質問する。



「なによ」


「君たちがこの宝石を買ったのは、ゴヨークという商人かい?」


「名前なんか知らないわ」


「こめかみに大きな傷がある、初老の小柄な男だよ」



思い当たったのか、ガルア様が一瞬驚いた顔をして、密かにリナリアさんに足を踏まれていた。


ガルア様も大概、思っていることが顔に出やすいかたなのね。



「やっぱりそうか。ありがとう」



言いながら、レオさんは今度はあっさりと宝石を投げて返す。


ガルア様がしっかりと宝石の袋を確保して、剣を収めたのを確認したレオさんは、僅かに迷ってから、こう言った。



「拠点を移すなら今後接点はないのかも知れないが、ゴヨークとの取引は控えた方がいい」


「そうですね。確かに、あまり筋がよくないと私も噂を聞いたことがあります」



レオさんの忠告に、コーティ様も同意する。


もしかするとふたりはすでに、王都とクーレイの間で行われている鉱石類の取引について、私が知っているよりもずっと多くのことを掴んでいるのかもしれない。


でも、それを聞いたリナリアさんは、逆に不愉快そうに眦を吊り上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者の先日完結作品】こっちもオススメ♪

ここをポチッと押してね(^-^)

『魔法学校の無敵の首席騎士様は、ちょっとコミュ障、大型わんこ系でした』

先日完結しました。首席騎士様が強いのにカワイイとの感想を多数いただいております(笑)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ