思わぬ邂逅
ルーフェスと別れた私達は、いよいよ鉱山に足を向けた。町の中もそれなりに高低差が激しかったせいか、いつのまにか山の中ほどまで登って来ている。
町のほうを見下ろせば、全体的に茶色い町並みが見える。
やっぱり、そんなに大きな集落ではないみたい。
もう少し登れば、先ほど見えていた穴やトロッコがある、鉱山の入り口が見えてくる筈。慣れないデコボコの山道に少し苦労しながら、私は一生懸命に山道を登っていく。
コーティ様も僅かに息が上がっているし、口数も少ないからもくもくと歩くしかないけれど。
ああ、もう少し。トロッコのところにも誰か人がいるみたい。わぁ、遠目から見てもすごく筋肉隆々、鉱山で働いているかたなのかしら。
奥の方に、小屋のようなものも見えてきたけれど……。
「ア、アンタ! なんでこんなところにいるのよ!?」
いきなり肩を掴まれて、ぐいっと引っ張られる。驚いて振り返った私の目に飛び込んできたのは、まさかと思う人だった。
ふわふわのピンクブロンド、アーモンド形の大きな目、愛らしい仄かに色づいた柔らかそうな頬と唇。保護欲を誘うその愛らしい容姿には、とても見覚えがある。
彼女はその大きな目を限界まで見開いて、私の顔をまじまじと見つめ、こう叫んだ。
「化粧薄いけど……なんか表情死んでないけど。アンタ、クリスティアーヌよね!?」
口をパクパクとあけたり閉めたりしながらも、器用に言葉を発する。
こちらのほうこそ、びっくりだわ。どうしてここに? 貴女は、たしか。
「リナリア、さん?」
「うわ、しゃべった!!!」
「貴様……なぜこんなところに居る!」
リナリアさんを庇うように、壁みたいに大きな男の人が割って入ってくる。地響きみたいに重い声で恫喝されて体が竦む思いだけれど、どこか聞き覚えがあった。
見上げたら、やっぱり予想通りのおかたが、鬼の形相で私を見下ろしている。
「ガルア様」
間違いない、リナリアさんを当身で気絶させて連れ去ったと聞いたけれど、やっぱりその後も二人は一緒に行動していたのね。
「おやおや、これは思いもかけない有名人に出会いましたね。騎士団長の御子息……いや、もう廃嫡されたのでしたね。そんなかたがなぜここに?」
笑顔のまま、鋭い言葉で牽制し、コーティ様がさりげなく私の体を後ろに引く。
「随分と品のない村娘を連れているようですが、よしんばクリスティアーヌ嬢に危害を加えるようなことがあれば容赦はしませんよ」
「酷い……品がない村娘だなんて」