コーティ様は強い
「ルーフェス、いきましょうか」
「……」
声を掛けたけれど、ルーフェスの返事がない。顔を覗き込んだら、既に爆睡していた。
「本当に限界だったのでしょうね」
ルーフェスが寝落ちしてしまったことに気付いたコーティ様は、軽くルーフェスの肩を叩く。それでもルーフェスは身じろぎひとつしない。完全に熟睡しているみたいだ。
「仕方ありませんね」
「コーティ様!?」
どっこいしょ、と顔に似合わない掛け声とともに、コーティ様がルーフェスを担ぎ上げる。
細い体なのに、危なげなく歩を進めていくコーティ様に、私は慌てて追いすがった。
「コーティ様に運んでいただくなんて」
「もう御者も部屋で休んでいるでしょうし、宿のかたの手を煩わせるのもなんですし。部屋も一緒なので、私が運ぶほうがましでしょう。ああ、荷物を持ってもらえると助かります」
話しながらもずんずん進んでいくコーティ様は、ルーフェスを担いだまま階段まであっさりと攻略していく。もう、止める隙も無い。あきらめた私は、荷物をとりに走る。
ずっと室内で草案を黙々と作っている、頭脳派でなよやかな印象だったコーティ様は、実はとっても頑健なおかただった。
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翌日のお昼も回ったころだろうか、ようやくルーフェスが目を覚ました。
「ん……」
小さな呻き声をあげたルーフェスが、ムクリと身体を起こして、ゆっくりと辺りを見渡す。昨日からすると、顔色もすっかり良くなって、目の下の隈も和らいでいる。
その姿に、私はこっそりと胸を撫でおろす。
……良かった、随分と回復できているみたい。
「おはよう、ルーフェス」
もう、おはようと言える時間でもないけれどね。
「あれ、姉さん? なんで……あれ?」
キョロキョロと部屋中を見回て混乱している様子なのが可愛い。コーティ様によると、どうやらルーフェスはあれから一度も目を覚まさず、こんこんと眠り続けていたらしい。
「昨日、ルーフェスったらあのままテーブルで寝てしまったのよ。コーティ様がここまで運んでくださったから、戻られたらお礼を言ってちょうだいね」
それを聞いた途端、ルーフェスの顔が顰めたまま真っ赤になった。
本当を言うとコーティ様はルーフェスが嫌がるだろうから、運んだことは内緒にしておいてくれと言ってくれたのだけれど、姉としてはそういうわけにもいかないもの。
お礼はしっかり言うべきだと思うの。
「情けない……恥ずかしい……」
ぶつぶつと呟いているけれど、ルーフェスはやがて諦めたらしい。
「姉さん、ちなみに今、そのコーティさんはどこにいるのかな」
「もうそろそろ戻ってくる頃だと思うけれど。朝から調査に出ていて、食事時に一度、情報共有にきてくださる話になっているから」
「はあ? 朝から?」
開いた口がふさがらない、という表情のルーフェス。その気持ち、痛いほど分かる。
なんせ私が起きた頃にはコーティ様は既に食事も入浴も済ませた、とてもすっきりしたお顔だったのですもの。
身支度全て整えてまさに調査に出ようという様子に、私もただただ驚くしかなくて。
もちろん、疲労など微塵も残っていない、いつも通りの雰囲気だったのは言うまでもない。




