過酷な旅路でした
全力でお返事したら、真っ赤になったルーフェスから、脱力した感じで止められてしまった。
やっぱりルーフェスは、私と仲がいいと思われるのは恥ずかしいとか、不本意だったりするのかしら。
ちょっぴり悲しいけれど、以前の自分の態度を振り返ると、それも仕方ないと思える。
ごめんなさいね、ルーフェス。
しゅんとしていたら、なぜかとっても楽しそうなコーティ様に「さぁ、そろそろ行きましょうか」と促された。
そうね、今は落ち込んでいる場合ではないもの。レオさんの安全のためにも、円滑な調査のためにも、一刻も早くクーレイに辿り着かなくては!
私は、馬車に向かって全力で走った。
************************
地獄のような移動期間を経て、私たちはようやくクーレイに辿り着いた。
ヘロヘロになりながら頑張ってはみたのだけれど、結果的には八日もかかってしまった。走る馬車の中で眠るのがどうしても難しくて、間で限界が来てしまったのだ。
私とルーフェスが音を上げる前に、コーティ様のドクターストップがかかったのだけれど、本当は私たちも限界だった。
クーレイに着いた、とコーティ様が言うから本当にそうなのだろうけれど、もう深夜に近い時間帯で、馬車の窓からは暗闇しか見えない。
「本当についたのか……? じ、地獄だった……」
ルーフェスのおなかの底から出たような声が、この旅の過酷さを物語っている。
「いえいえ、お二人ともなかなかに有望でしたよ。吐いたのは数回だけでしたし、なにしろ脱走せずにクーレイまでたどり着きましたしね」
「その有望の基準、おかしくない!?」
「ツッコミできる元気があるなら大丈夫です」
穏やかに微笑むコーティ様は、さほどの疲労感すら見せていない。草案作成もすでに二案は終わったとのことで、予定通りだと余裕綽々の雰囲気だ。
……もしかしたらコーティ様は人外かも知れないと真剣に疑った八日間だった。
「姉さん、真面目に市井官は考え直したほうがいいと思うよ? この過酷さ、命にかかわるから!」
「聞き捨てならないことを」
コーティ様がルーフェスの耳を上に引っ張ってオシオキしている。この旅の間で、コーティ様もルーフェスも、互いに遠慮がなくなっていた。
そんなこと気にしていられる旅ではなかったものね。
「自分が耐えられないからと他のかたの希望の芽を摘むのはどうかと思いますよ。現にクリスティアーヌ嬢のほうがまだしっかりしていますからね。本当に有望です」
コーティ様が私を褒めてくださるけれど……そうなのよね。
私のほうが、最終的にダメージが少なかったと言うか、ルーフェスよりはまだ元気かも。
これはもしかして、セルバさんの循環式の回復魔法の効果のおかげなのかしら。だとしたらある意味ドーピングかもしれない。




