姉さんなんでそんなに元気なわけ?
「クーレイから入って来ているものを見るに商品の幅が広いのですが、一点あたりの入荷数はごく少数に抑えて希少性を高めることで金額を吊り上げていますし、王都で珍重されるであろうものをピンポイントで取引する選定眼も確かです」
コーティ様もルーフェスの真剣さを感じてくださったのか、からかいの要素は一切なく丁寧に説明してくれる。
「しかも、王都からは宝石を一括で大量に仕入れています。クーレイは結構な辺境ですし、人口も百人前後で推移しています。あんな田舎の村でそんなに量が必要な筈はないですからね」
「他の販路も持っている……? いや、むしろ自分たちの懐でプールして、小出しにして暴利を得るか、よその街に跳んで売りさばくつもりかってことか」
「そうです。今回の問題を引き起こしているのが、商才のある個人の商人ならさほどの問題もないんですけれどね。クーレイで物流を取り仕切っている輩がどれほどの規模か、危険度がどれほどか、まだ情報がありません」
「集団だった場合が厄介だってことか」
「ええ、よしんば質の悪い集団だった場合は、レオナルドくんが単独で交易の交渉にあたった際に危険があるかもしれませんし」
コーティ様の言葉に、思わず体がびくっと大きく揺れた。大丈夫なのかしら、レオさん。怪我だけはしてほしくない……!
不安でつい、祈るように胸の前で指を組む。レオさんが、危ない目に遭いませんように……!
そんな不安が顔に出ていたのか、コーティ様に苦笑されてしまった。
「まぁ、そんなわけですから、レオナルドくんの身の安全のためにも、一刻も早く、と急いでいるのです。ですから、二人には厳しい日程ではあるのですが、なんとか耐えて欲しいのですけれどね」
もちろんです、コーティ様。私、頑張ります!
気持ちが高まったからか、いつの間にか私は立ち上がっていた。どこからか、フツフツと力が湧いて来る。
私は、力強く宣言した。
「そうですね。絶対に、早くクーレイに辿り着かなくっちゃ」
こうしちゃいられない、勢い込んで、ガッツポーズする。足が自然に、馬車の方に向いていた。
「うわ、急に元気になった」
「こうなった女性は強いですよ。男の子なんですから、体力でクリスティアーヌ嬢に負けないでくださいね、ルーフェスくん」
急に雰囲気がくだけてからかうような口調になったコーティ様をひとにらみして、ルーフェスは颯爽と立ち上がる。……つもりだったようだけれど、若干足元がふらついたのが悲しい。
「なんだよ、姉さんなんでそんなに元気なわけ?」
恨みがましく言われて、思い出した。
「あ、セルバさんの餞別……」
「なにそれ」




